無人島には漂着しないほうがいい
★★★★☆
伊豆諸島と小笠原諸島の中間に、ポツリと浮かぶ鳥島。アホウドリが繁殖するほかは、住む人もいない無人島である。ただ、海流の関係からか、日本近海で遭難した船がしばしば漂着する島であった。本書は18世紀に起きた何件かの事件を綿密に調査したもので、無人島での生活がどのようなものであったか、また、無事に帰国したのちの人生を再構成している。
『ロビンソン・クルーソー』や『二年間の休暇』などを読むと、無人島生活もなかなか良いもののように思える。しかし、現実は違う。つらく、苦しい日々なのである。過酷な環境、食物の不足、死んでいく仲間たち。本書では、その様子が克明に描き出されており、感動的ですらある。
惜しむらくは事件の再構成が主眼で、それ以上の広がりに欠ける。時代性、背景などにも触れられていれば、面白かったと思うのだが。