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愚の力 (文春新書)

価格: ¥819
カテゴリ: 新書
ブランド: 文藝春秋
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内に向かう本 ★★★★★
私もそうなんですが、現代人は外部のことばかり気にして、
幻のようなものに振り回され、うろうろうろうろし1日が
むなしく過ぎてゆきます。しかし、この本は、こころの
内部へ、スポットライトをあてて、そこに見えてくるもの
を教えてくれます。それが、煩悩(執着)という奴でした。
こいつがいろいろ悪さして、苦しみや迷いを起こしているのです。
これを消してしまえばと思うのですが、凡夫の力じゃ取れない
ときています。じゃあどうするのか、この本が教えてくれました。
親鸞と言うどえらい坊さんがいたものですねえ。
私の座右の書にしています。
「自分探し」に疲れた人はぜひ読んでみてください。 ★★★★★
本書は浄土真宗の大谷さんが悩める現代の日本人へ書かれた本です。
つまり日本仏教界の頂点にいらっしゃる方の今の考え方を知る本でもあります。本書全体を通して中学生でもすべて理解できるほどていねいにやさしく書かれています。

人生は自分の思いどうりにならない、思いどうりにしようとするから苦が生じる。人間中心主義ではなく、動物植物など全生物を含めた一切衆生。これらは浄土真宗の教えであり、またかつ大谷さんの考える深いところでの仏心だということが本書を読むとわかります。

「一切衆生」「専修念仏」「現生正定聚」など、仏教用語が多々出てきますが、大谷さんはその一つ一つを丁寧に、仏教をまったく知らない人にもわかりやすいように説明されています。なぜ、こんなに誰にもわかりやすく現代の日本人の悩みを書かれているのかは、大谷さんの教養もさることながら仏教への真摯な姿勢がそうさせるのでしょう。大谷さんの言葉には人と人との自我の刀を抜く間合いがなく、抱きしめられてしまう感じがしました。

巻末のダライラマとの対話では、大谷さんの浄土真宗とチベット仏教それぞれお互いの目指している世界観が同じものなのだと思いました。この中でダライラマは、「日本人は昔悪いことをしたと非難されることもあるが、どんどんいいことをして、日本人はいい人間ばかりです、と言われるようになればいい。私たちはチベット仏教人は何もない難民です。日本人は国があり、自由があり、財力もあり、教育の質も高く素質もある。」と述べています。これはダライラマが大谷さんに向けて言われたのと同時に私たち日本人にも向けて語ったことなのだと思いました。

自分の生き方や考え方に迷ったときに何度も読み返したくなる本です。
見つけられない「自分探し」に疲れた人はぜひ読んでみてください。
個人的な、あまりに個人的な ★★★★★
 大谷光真氏とダライラマ氏の対談は、信心についての考え方、そして、国際情勢についての態度に大きく相違があるにもかかわらず、協力し合うことを誓い、対談を終えているのは、非常に素晴らしいことだと思う。
 『朝には紅顔ありて』『世のなか安穏なれ』に比べて、非常にパーソナルな印象を受けるのは、私だけではないでしょう。『愚の力』は、『さとりと信心』と『まことのよろこび』と並ぶような主著といってもよいもので、しかも前2冊は法話集なのに対して、1冊という単位で考えられた本である。大谷氏は1冊単位で、ものを書くのは、初めてだろうから、その構成力には驚かされる。ものすごく考え抜いたと推される。巻末に教書を採録されたのも、35歳の時に、門主としての立場でかかれた文章を、個人としてぶれずに、ここまで深めたという、代表という立場に甘えない姿勢が見て取れる。仏教を語る際に、世の中のお坊さんのほとんどが極端な話に終始する中で、「厳しい体験がなくても、阿弥陀如来に救われていく道をあきらかにしなければならない」(p95)とある意味で豊かな成熟した社会にあって、「切なる生き方」を全体性を損なうことなく、真摯に問うている。
 最良の仏教入門であり、今年一番の仏教書である。