23歳の村岡洋は、高成という男の運転手をしている。
高成の好きなもの。黒のメルセデス560。モーツアルトのピアノ・コンツェルト(21番)。オタール・XO。
村岡の好きなもの。ランチア・スコーピオン。エヴァン・ウイリアムズ。外国旅行のことを書いた本。
村岡は、雇い主の高成のことを嫌いではなかった。新年早々、その高成が殺された。犯人として、高成の商売敵が挙げられた。すべてがうまく嵌まりすぎている、どこかおかしいと感じた村岡は、独自に真犯人を探し始めた。
人間は金のために動いているようで、じつは自分のために動いている。自分のために生きているようで、ほんとうは他人のために生きている。そんなことを読後ふと思った。