読み始めた瞬間から、かつての北方ワールドを彷彿とさせるハードボイルドタッチの物語に興奮しながら読み進みました。一介の会社員が、身体の中に眠っていた自分の本来の姿を、ボクシングや会社の抗争と共に起こしていき、上司や社長にも対等に渡り合い、自らの鍛えた体を武器に、暴力団組織にも立ち向かっていく。ここまでの流れの暴力シーンも迫力抜群で、ぐいぐいと展開に引き込まれていくのだが、後半からその展開がオーバーになりすぎてしまい、ラストへの過程は不満の残るものでもありました。前半の展開が良かっただけに、後半は違う展開にしてほしかったし、大きく横道に反れてしまったように感じたのは大きなマイナス。北方謙三らしさは随所に見られていただけに、後半部分だけが残念です。