化石の歴史
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津和野出身の日本岩石学の先導者・小藤文次郎について120周年を迎えた東大が発進しているネット資料を検索し、その中で紹介されていた本書を購入することを決めた。著者の古生物に対する情熱を知ることができ化石研究の歴史を辿ることができた。先覚者の知識の集積に新しい知見に基づく研究成果を加えながら人類の知の集積に貢献する研究者の姿を垣間見ることができた。
Ammon's horn
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本書は東京大学出版会のNatural History Seriesの中の1冊である.著者は古生物学を専攻する学者であり,地質情報整備・活用機構のweb siteでの『地学のトリビア』の執筆者としても知られている.東大でのカイミジンコの化石の研究から派生して著者が古生物学史を志した理由は,第9章「化石の自然史」に詳述されている.この章はプロローグとエピローグが合体しており,この本を著すに至った経緯や動機,意義がまとめられている.執筆者の息づかいを知るには最初に第9章から読みはじめるのも一興かもしれない.表紙に肖像として描かれているのは地質学,古生物学の発展に貢献した偉人である.
Mary Anning (1799-1847) ─ Kark Alfred von Zittel (1839-1904) ─ Georges Cuvier (1769-1832) ─ Georges-Louis Leclerc de Buffon (1707-1788) ─ Charles Darwin (1809-1882) ─ 木内石亭 (1724-1808)
Darwin以外は初めて接する自然史家の名前が多かった.
この本では化石の定義に始まり,時代を遡るように地学の発展や化石学に貢献した古今東西の自然史家,博物学者が網羅的に紹介されている.その数およそ200名であり本文のページ数に匹敵する.著者もそれと認めているように,推敲の不十分な点や尻切れトンボな記述もあるが,荒削りな内容であってもプレパレーションされる前の化石を眺めるようなもので楽しかった.幸いにも文献がアルファベット順に整備されていること,人名・事項索引が整備されている点は親切である.矢島氏の発掘した1次資料から発展して古生物史学が新たなジャンルとして深化していくことが期待される.
「化石」をめぐる人々の物語
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「大学は卒業できたが、化石からは卒業できなくなってしまった」という著者の化石についての「エッセイ」というか「学術書」というか、何とも味わいのある一冊。
数十年間の著者自身の化石に対する思い入れや研究、そして古生物学の進歩、さらには数億年単位の地球と古生物の歴史と、三つの歴史が入り乱れ、紡ぎだされる文章は深い学識とユーモアに彩られ、たちまち読み終えることができる。前提となる知識はあまりなくとも読み進められる。
著者を含む古今東西の人物のユニークなエピソード、そして壮大な地質学・古生物学の世界の醍醐味をたっぷり楽しむことができる。