すばらしい冒険物語
★★★★★
騎士になるための最後の試験の夜に、謎の声に誘われて、訳がわからないまま、冒険へと踏み出した騎士候補生ティウリの旅は、自分が託された使命や、本当の敵が誰かわからないまま、西へと向かう。道中、彼の前に現れる人たちは、敵なのか味方なのか。あるいは、信じて良い人なのか、警戒すべき人なのか。
架空の国を舞台に描かれたファンタジーではあるが、魔法や怪物などは登場せず、少年ティウリが、自分自身で考え、あるいは人に助けられて、前進していく。そして、最高の道連れピアックと出会い、友情をはぐくみながら、ついに使命を果たし、その謎も解き明かされる。
少年騎士ティウリが、冒険によって、たくましく成長していく様子が描かれ、困難に出会った時の気持ちも、丁寧に表現されていて、物語に入り込んでしまった。
これまでに書かれていたレビューを読んで、興味をひかれて読み始めたが、まったく期待を裏切らない物語だった。
上巻のレビューに書かれているように、もっと早く読みたかった。もちろん、大人になった今読んでも、十分に楽しむことができたが、私が子どもの頃に翻訳されていたら、まちがいなく夢中になり、主人公ティウリやピアックは、心の友になっていただろう。
続編の白い盾の少年騎士〈上〉 (岩波少年文庫)も、楽しみに読みたいと思っている。
反戦の児童書
★★★★★
ティウリと彼のピアックは王への手紙を狙う市長やスパイのスルーポルの前に絶体絶命に立たされます。
しかし、ティウリはピアックや他の多くの人に助けを借りて、ついに任務を全うすることになりました。
任務終了後、その手紙には偽の同盟のことが書いてあり、ウナーヴェン王国は戦争準備に入ります。
さてティウリですが、故郷のダホナウト国へ戻り、国王の特別のはからいで見事騎士となります。
しかしティウリは手紙を届ける旅を通して、騎士になるのに剣も盾も必要でなく、
騎士でなくても良いことはできるということを悟ります。
そして物語は「きっと、二人のするべきことがあるはずだ」とティウリが述べて終わります。
この後ティウリとピアックははたして何をしたのでしょうか?
二人は戦争を起こさせないよう身を粉にした、と私は思います。
ティウリは騎士として戦争に参加して戦うのではなく、
騎士として、そして一人の人間として戦争が勃発するのを防ごうしたと思います。
社会に貢献できるのは軍事力を持った騎士でなくてもできるということ。
現在日本の拡大軍事化の大義名分は中身がないことを語るとともに
一人の人間の大きな可能性を訴えていると思います。