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こころの病を生きる―統合失調症患者と精神科医師の往復書簡

価格: ¥1,728
カテゴリ: 単行本
ブランド: 中央法規出版
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人の心に近寄るということ ★★★★☆
往復書簡であるので佐野さん、三好さんの書かれた文章を交互に読むことになります。

医師である三好さんが患者の佐野さんの心の内側にもつ不安を、私たちが理解できる範囲の言葉でよく説明されており、
何よりも少しずつお互いが心を開いていっているように思えました。

佐野さんの背中を後押ししている感じでしょうか。
「ありのまま」を生きていくことの大切さ、人としては当たり前のことですが、生きていくうちにどんどん見失っていってしまう事だと思います。
病気であっても、健常であっても、人それぞれに向き合える事があるのだと実感した一行があります。

「この病は一生もの。」佐野さんの言葉です。
なんとなくですが読み進めるうちに、省みるべき事が多いなぁと思わされたのでした。

・・・・時間を書けて読まないと、私には難しい言葉もちらほらと出てきましたが。笑
非常に読みやすく、興味深い内容でした。
当事者のリアルな声として大きな価値がある ★★★★★
健常者と区別が難しいほどに回復した後の統合失調症患者(佐野)と主治医(三好)との往復書簡である。何よりもまず佐野氏が非常にデリケートなことをカミングアウトしてかなりの量の文章を公開している点が凄い。本書の価値は何よりもまずこのことにある。本書と比べると性同一性障害のカミングアウト本なんてのは軽い本である。

さて、具体的な内容に関してだが、基本的には患者と医師との間で行われた「意見交換」に少々手を加えて出版したものである。そのため、統合失調症や精神病の一般論や正当とされる医学知識とは異なる部分もあるとあらかじめ断りが入れてある。また、医師の言葉には患者を不用意に刺激しないようにとの配慮から表現を工夫したと見られる部分が非常に多くあるし(例えば「自分を守る嘘は悪くない」なんてとんでもないことまで書いてある)、患者の回想に関しては少々の脚色や思い違いが入っていると評者には感じられる部分がある。一般論の勉強のためではなく、希少性の非常に高い事例・生の声として読むのが正しい読み方だろう。佐野氏の病名が統合失調症という非常にデリケートでやっかいなものであるだけに、読んでいて考えさせられることがものすごく多い。一般人が普段はあまり考えないことを、思考に強いバイアスがかかっているものの、佐野氏が深く考えていることもよくわかる。

本書から評者が想像する罹患前の佐野氏の個性は、他人への共感能力や自分の知識の検証能力が極端に乏しい人物というものだった。そのため、「統合失調症の患者であること以外には普通の人」が書いたものとは受け取れなかった。最も考えさせられたのは、佐野氏のような個性の人が自分を守る技術を身につけていないために、無防備な状態のまま想像が難しいほどのストレスを感じて生きてきたであろうということ。評者が普段の生活で出会う共感能力に乏しい人や空気の読めない人というのは、大抵は、傲慢で押し付けがましくて保身に一生懸命という印象を他人に与える。普通の人のように共感能力を身につけることも、迷惑な人のように保身や攻撃の傾向を身につけることもしなかった場合、本人が感じる孤独や痛みはどれほどのものなんだろう。本書のような勇気のある出版物以外では、そのような人の心のうちを知る機会があるだろうか。
「考える」ために ★★★★★
内容としては患者と医師との往復書簡ですが、行と行、言葉と言葉の間に、「生きていくこと」への真摯な姿勢が充満していて、「こころの病」という視点にとらわれない、すべての人に開かれた文章になっています。
この社会で、「自分」という条件を背負って、他者と共に生きていくということ――、その意味に謙虚に向き合うことを通じて、患者も医師も多くのことを学んでいるように感じます。

ここに書かれているのは答えではなく、問い続ける姿勢です。「では、あなたはどう感じ、どう考え、どう生きるのか」という問いを二人の書簡の中に見出すことができるなら、読者にとって有益な一冊になると思います。「考える」ための読み物としては、掛け値なしの良書です。

理性的な患者と真摯な主治医との貴重な試み ★★★★☆
 20才で発病した男性統合失調症患者(カミングアウトし、作業所を立ち上げ活躍している)と主治医との往復書簡の形をとった、従来の類書にない意欲作。精神科の一般的な教科書では、摩訶不思議で異様な病気としか思えなかった疾患が、誰にでもある人間心理との共通点から理解できる。分裂病から統合失調症と名ばかり変わっても、100人に一人という最も頻度の多い精神疾患でありながら、現代にあってなお偏見や誤解にさらされ続けている。幻聴や幻覚、限りない孤独や不安、心をコントロールできない恐怖感など、疾患の特徴や具体的な薬物に対する感想など、患者自身の体験がきわめて解りやすい表現で語られる。精神科医はもちろん、一般医にも参考になる。主治医の人間理解の中で患者に接している姿勢も良く伝わってきてよい(患者は「ソフトな精神科医」と表現している)。精神保健福祉士の国家資格に合格し、家庭も築いた患者の姿に「人間のこころって何だろう」という素朴な疑問と日本の社会の有り方をも考えさせる好著である。
私を治癒へと導いてくれた人 ★★★★★
カミングアウトには強い勇気と意思、そして自分の生きてきた人生をまるごと認め受け入れる作業が欠かせない。筆者の佐野卓志はみごとにそれを実践し、ムゲンのHPにてピアカウンセラーと言う手法で多くの病者に勇気を与え続けてきた。己の病を受け入れること、そこから本当の治癒は始まる。彼はそのことを私に教えてくれた。彼の人生から受ける感銘は、病者に勇気を与え、病を知らない者にはその世界観を伝える。
また、親子2代に渡って、佐野氏の治療に当たってきた三好医師は、適切な距離感を保ちながら、病の世界へと分け入って行く。そして、医者と患者と言う関係を通り抜け、人と人との関係を築いて行く。
病に打ちのめされた者、病を知らない者、医療に従事する者、日本を構成する全ての人々に対して根元的なメッセージを提示する名著。
病にとまどう当時者、家族、関係各者、病とは無縁と感じている現時点での健常者、
全ての人々に手にとって頂きたい、一冊。