ある埼玉の精神病院探索では、「知的障害ゆえに犯罪を繰り返し病院送りにされた患者などの切ないドラマがつまる精神鑑定書や、何気なく取ったカルテが院長のものだったという偶然・・・」など、レポートとしておもしろい。
写真はモノクロが中心なので残念だが、カラーも何枚か載せてくれてます。
4ページ目の「軍艦島」のカラー写真は良いですね。
それに比べると、この本はあまりにも「しつこい」。
この本は、「物件」の歴史、出自にあくまでもこだわる。むしろ、構造物としての建物については、その劣化の具合程度しか気にならない。つまり、ハードよりソフトに焦点が当てられているのだ。それだけのことで、赤瀬川らが芸術でものあり得たのに対し、じつに3面記事的な覗き見趣味的なスケールの狭さになっている。
そして、赤瀬川らが自らの対象を明らかにしよう、つまり、何を見なければならないのかを明らかにしようとしたのに対し、この本では、それが示せていない。廃墟で、何を見るべきかを提言できていない。廃墟の楽しみ方を啓蒙できていない。好きな人に分かれば良いという「オタク的」な本である。
廃墟の「見方」がかかれていない、けだし「歩き方」の本である。
情報量もかなりのもので、それで1500円は実際お得なのでは、と言う感じ。
廃墟に興味があるなら買って損のない本です。