資料として読むか、本として読むか。
★★★☆☆
読み進めるうちにだんだん「ああ、結局は自慢なんだなあ」という思いが強くなってきて、かすかに不快感を感じた。文章の基本がなっていないので、とにかく読みづらい。ストーリよりもまず人脈ありきで、どんどん有名人を登場させているが、それぞれの話がぶつ切りだったりして、時間の流れも時系列になっていないところが多い。また、華やかな交友関係の記述の合い間に(半ば強引に)「世間、権力に物申す」的な主張がちりばめられているが、これらのくだりもイマイチだな〜と思った。いってることにはうなづけるんだけど、もっとさりげなくまとめてほしい。あるいは、いっそのこと自分の考えはひとつの章にまとめてくれたほうがよかった。さらに、著者の女性関係の記述はまったく不要。読む側はそんな話は別にどうでもいい。ひとしきり自分の女性関係について述べた後、「自分は妻子のいる身で、今の話は全部モテる友人のことですから誤解なきよう!」みたいな言い訳をしてるところなんて特に。。書いててカタルシスでも感じているんだろうか。
そもそも、限られたスペース(枚数)の中でどれだけ「闇人脈」を登場させるか、どれだけ自分の主張を挿入できるか、というのがモチベーションだと思うので、これも致し方なしというところか。結局行き着くところは「自分史」である。自分の人生の集大成としての「自分史」にいろいろ詰め込みたくなるのは仕方ないと思う。
諸岡寛司の「赤坂ナイトクラブの光と影」も全く似たような回顧本だが、こちらを読んだときはこのような感想をもたなかった。それは単に、文章表現が謙虚なためであろう。
ところで、戦後東京アングラ史を検証する資料としては、逆に実名を挙げての記述が多いことが幸いし、貴重だと思う。たとえば'60〜'70年代の東京の戦後史の裏舞台に興味がある人とか、ロバートホワイティングの著書を面白く読める人であればおすすめできる。もともと自分は資料として購入しているので元は取れたと思っているが、上述したコメントは、あくまで(世間に出す)「本として」の感想。