内容は4部構成、全16章だて。第1部「確定的なキャッシュ・フロー流列」では確定利付証券にからめてポートフォリオのイミュニゼーション、応用金利分析理論についての解説が加えられている。第2部「一期間確率的キャッシュ・フロー」では、CAPM価格付けモデルはもとより、証券市場線、ベータ・システマチック・リスクの解説がなされ、さらには対数最適価格、有限状態モデル、リスク中立価格付けなど、最新の理論が網羅されている。
第3部「派生証券」では、先物、先渡し、スワップを交えた派生取引はもとより、資産ダイナミクス・モデルの展開を目指して、2項格子モデル、ランダムウォークとウィナー過程、伊藤の定理、さらにオプションに関してはブラック=ショールズ方程式の考え方が収められている。第4部では、最適ポートフォリオ成長を考えた「一般的キャッシュ・フロー流列」設計方法が示されているが、いずれの章においても、金融商品の解説に終始することなく、投資環境の特性までが分析の対象となっている点に注目したい。
関連するトピックスは、単純なものから高度なものへと順を踏んで幅広くカバーされている。さらには豊富な練習問題、充実した索引による使い勝手の良さが相まって、この本は数式にアレルギーの少ないMBAホルダーはもとより、意外に幅広い読者層に受け入れられるのではないだろうか。微積分に長けた金融エンジニアでないと無理、と考え本書を避けていては、思わぬ機会損失を被ることになるかもしれない。待望の、金融工学バイブルの登場である。(任 彰)