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いじめとは何か―教室の問題、社会の問題 (中公新書)

価格: ¥777
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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公共性問題としてのいじめ問題 ★★★★☆
いじめとは大人社会の反映である、という一見ありふれた結論なのだが、教育の問題を教育の専門家の議論に封じ込めるのではなく、またいじめる者といじめられる者の心理の問題に還元するのでもなく、日常の公共的な問題の中の一つとして位置づけている点で、説得力もあり、また建設的な議論であるように思えた。近代社会は私事化・個人化が押しとどめられない世界のトレンドだとしても、こうした傾向は残念ながら特に日本に強い。子どもさえこの私事化の文化を内面に社会化することようになるとすれば、やむを得ずいじめが生じたとしても、それに付和雷同的に関わるか、あるいは知らぬ存ぜぬの傍観者として関わるか、いずれにせよ、積極的であれ消極的であれ、いじめを増幅することになる。こうした私事化によるいじめの増幅をどう阻止するか、それは、社会の公共化、ソーシャル・ボンドの育成、市民教育の充実にかかっているという主張、至極当然だが、いじめ問題を社会の不安として真剣に考える者にとっては、頼りがいのある見解であると思う。具体策に乏しいという批判もあるかもしれないが、それはないものねだりだろう。われ関せずの市民を公共世界に引っ張り出す社会の公共化自体が難問なのだから、いじめ問題の解決が難問であることに何も変わりはない。教育者であれ一般市民であれ、いじめ問題の処方箋を探る方向性を示すという点では、本書は成功した書物だろう。
「いじめ」を定義から考える ★★★★☆
本書は、序盤でまず、(主に)欧州でのいじめ研究というものの歴史と、日本での展開。その中で、日本においてどのような対策が行われたのか、などを記し、その上で、いじめというものをどのように定義をするか、を考察する。そして、後半では、その比較などを元に、海外の取組などを元にした方策を提案している。

まず、読んでいてなるほど、と思ったのは、書のタイトルでもある「いじめとは何か」を巡る論議。
いじめ、を巡って「こうするべき」とか、色々と言われるわけだけど、そもそも、どう定義をするのか? が大きな問題になる。しかし、その定義故に、それぞれの視点で考えたときに、それぞれにギャップが存在してしまい、故に、被害を受けている存在を苦しめてしまう。また、被害者の声が届きづらい状態になってしまうことがある。「いじめ」の定義を巡る諸問題は、非常に重要だと思う。
また、本書で記される各種の調査などでの、欧州との比較なども興味深く読むことが出来た。

ただ、その辺りと比べると、後半の対策については、ちょっと弱い印象。
対策として提案されるのは、欧州の市民性教育のような、規範性などを高めるソーシャルボンド理論を取り入れる、というもの。
ただ、日本の場合、文化的な風土の違いを考えた場合に、キリスト教文化という基盤がある欧州と異なる部分があり、どの程度、それが受け入れられるかが未知数。また、研究そのものが30年程度という比較的短い積み重ねしかない点で、それが完璧なのか、というと疑問が残る。やることに反対ではないが、前半の議論と比較すると、研究の積み重ねが不足していると言わざるを得ないと思う。

とは言え、簡単に「いじめ」という前に、まず「いじめとは何か」を考える必要性、その難しさの指摘などは非常に意味があり、一読の価値のある書だと思う。