お子さんがいらっしゃる方、一読の価値はあります。
★★★★☆
本書の最も優れている点は、理想を追求するのではなく、現実論としていじめの現場でどのように対処していくべきかを、具体的に示唆しているところである、と私は思いました。
いじめ根絶という聞こえの良いスローガンだけで実態が変わることなどあろうはずもなく、具体的な対処療法の継続こそが防止という抑圧に変わっていくのであろうと思います。
著者の言うスクールカーストは実際の学校で使われている言葉ということで、とても現実的な概念です。この存在を認めるとこから出発してパターン毎に対処を行っていくという著者の提言は少なくとも私にはわかりやすくイメージすることができました。
4月から小学生になる息子をもつ親として、この段階で読んでおいてよかったと思える1冊でした。
今すぐに出来ることを学校が実行して欲しい
★★★★☆
いじめによる自殺報道のたびに繰り返される、識者と言われる人たちの空回りな論議、
教育再生委員会の現場の実態とはかけ離れた提言に、少しでも疑問を感じた方は、
是非一読をお勧めします。
いじめはなくならない。大人なら誰でもが知っていることです。
著者もそれを認めたうえで、では、少しでも被害を食い止めるためには、
具体的にどうしたら良いかを、スクールカーストという新しい切り口から分析し、
はっきりと書いています。
ひとつは、学校内で起きた犯罪行為には、即時出席停止・警察官による逮捕・
家庭裁判所による審判・少年院送致や強制転校といった措置をとることで、
最も凶悪ないじめから児童・生徒全員を守ること。
これは、今すぐにでも実行して欲しい事だと思う人は多いはずです。
もうひとつは、被害者が被害を訴えたときには、
精神科医やスクールカウンセラーの意見を尊重し、
学校がいじめを確認できなくても転校を許可することで、最も弱い被害者を守ること。
緊急避難を容易にすることも今すぐに実行できることだと思われます。
また、いじめ問題を空回りさせていることのひとつに、
『暴言よりひどい妄言』という分析には、深くうなずけるものがありました。
これを無くしていくだけでも、相当の効果があると思いました。
いじめは根絶できないという諦観と、
さまざまなテクニックを駆使していじめ予防に取り組む貪欲さ、
双方を兼ね備えた時、学校は「規範の内面化」と「いじめ免疫の獲得」が
同時に可能な学びの場に戻ることが出来る。
そうしたいと思う全ての人に、手にとって欲しい一冊です。
あ
★★☆☆☆
イジメを悪いとわかりつつする子供にはいったい対処すればいいのでしょうか?そもそもイジメ=悪という、あまりにも自明な道徳が内面化されないで、イジメ=悪という事実だけが伝達されている状態に問題があるのでは?いい大人になってもまだこのような状態の方も大勢いるでしょう。普通の人間なら試行錯誤を経て成人までに、イジメはどんな状況だろうとやってはいけないという当たり前の考えを持つに至る筈です。
イジメをやる人間はだいたい、やったことを正当化しようとします。
それから表面的には謝罪しつつも、深い反省はなく、再度同じようなことを繰り返すのです。
まるで、なんどもなんども刑務所とシャバを往復し続ける累犯者のようです>いじめっ子。
ことほどさように、イジメは犯罪なのです。イジメた子供は刑務所にぶちこみましょう。そうして、腐りきった性根を叩き直す以外に道はないです。
この本の著者のように、いじめについてじっくり考えようでは遅いのです。甘っちょろいのです。
感情論や妄言ではなく、正面からいじめに向き合う良書
★★★★★
いじめに関する議論は多々なされてきているが、
「いじめをなくす心の育成」や「いじめる生徒に鉄拳制裁」といった安易なものや
「いじめは必要」といった解決を放棄した議論が多い。
その中で本章は、正面からこの問題に取り組んでいる。
まずいじめが起こる原因と過程をモデル化することにより明らかにしている。
その際には批判を恐れず「スクールカースト」という階級概念を導入している。
そしていじめへの対策を講じているが、
ここでも「根本的な解決策は見つかっていない」と包み隠さず断った上で、
リアリティーに即した対策が示されています。
全体として、「いじめ」を考える上では
問題の本質を鋭く突いている他に類を見ない良書です。
いいこともあれば悪いことも
★★★★☆
内容については、内藤朝雄さんという方のいじめの考察をもとに、私はさらにこう考えたという視点を加え、いじめの構造というタイトルをつけて出版したという格好の本です。
教職経験者が執筆したという点が、良い点でもあり、悪い点でもあったかなと思います。良い点は、現場の先生が書いたゆえに、実例についてはリアリティがあります。悪い点は、色々いいたいことがあるのか、保護者へのグチからゆとり教育の批判までしていて、何が言いたいのか焦点がぼやけています。いじめの本ならいじめについて書くべきで、学力についてはまた別の機会を狙ったほうがよかったでしょう。
解決法については、基本的に管理教育によるけじめで対応ということを描いています。これも効果が期待できるものもあればできなそうなものもあります。例えば加害者の出席停止は、これは期待できます。しかし、警察を導入するというのは、警察は保守的な組織だから、いじめに理解があるかどうかはグレーゾーンだと思います。
最終的には、このようにいいこともかいてあればあやしいこともかいてあるという感じです。それでもテーマが面白いので、よければ一読を。