二・二八事件の傷痕と肉親の絆
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1947年、台湾では蒋介石の国民党政権によって二万人もの台湾人(本省人)が虐殺された。「二二八事件」である。この事件は国民党政権によって45年間封印され、台湾人の心の傷となってきた。
著者の父親は当時、新聞社の社長であったため、国民党当局にねらい打ちにされ、連行されたまま帰らなかった。その後、著者は、あらゆる活動を通じて父親の行方を追い続けた。ついに1992年、二二八事件は公に認知され、歴史的な評価が定まった。全編を通じて、著者の父親への愛惜の思い、祖国台湾に対する思いに圧倒される。
我々日本人は、こうした台湾人の思いにどれだけ耳を傾けたのだろうか。1970年代は、「進歩的文化人」が闊歩する時代だった。関寛治という東大教授が「台湾独立派はCIAの手先だ」という暴言を吐いたのを今でも鮮明に記憶している。また当時、台湾へ旅行することは「反中国」的行為だというような、噴飯ものの意見も横行していた。イデオロギーによって曇らされた目は、真実を見つめることはできない。
さらに、我々は二二八事件が、台湾の親日感情を温存させたという側面も忘れてはならない。これは歴史のアイロニーである。
本書をぜひ、文庫本でも刊行して、多くの方々に読んでいただきたい。