芸術は長く、人生は短し。
★★★★★
書名についてもの申す。
書名は必ずしもテーマでなくてもいいと思うが、本書は序詩にもある「人生を輝かせるためにアートを」が書名でもよかったのにと思う。「人生を輝かせる」も生きる目標としてスピリットがあるが、十の話で、焦点が拡散する。医者には珍しく心身の健康を言挙げせず「アート=芸術」を強調して異色の内容がここには綴られているのだから…
「人生は短くアート(芸術)は長い」という古き賢者の教え退けて、闇雲に働いてきた日本人に反省を促している。芸術は命を長引かせることはできても、せいぜい百年まで。優れた芸術は半永久に伝えられる。
Art is long life is short(芸術は長く、人生は短し)古代ギリシャの医者ヒポクラテスの言葉で、彼の『警句集』に見られ、世界的名文句になった。この一句は、何の説明も要らないから、広く日本のみならず全世界に周知のアフォリズム(aphorism)となった。
本来は、芸術ではなく【医術】は一生かけても究められないくらい奥が深いが、人の一生は短いから時間を大切にして勉強するようにという(意外な)教えであった。
本書はそのことには触れられていない。 10話の中で主題のしっかりしているのは
「創(はじ)めることさえ忘れなければ、人はいつでも若くある」この一つに尽きる。
「生きるための希望を与えてくれる」文学・絵画・音楽に親しみ、さらには「創る」ことが出来るならば…