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最後から二番目の真実 (創元SF文庫)

価格: ¥1,008
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
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P・K・ディック、異色の長編 ★★★★☆
 1964年の作品。未来、地上で続く核戦争から逃れ、地下都市で何年も専制政治のもとで圧迫された生活を送りながらも地上に出られない人々の世界が舞台だが、実は地上では戦争などとうの昔に終わっていて、彼らの地下都市の上にはすでに復興された都市が栄えているというアイデアが抜群にいい。
 キング・オブ・アイデアことディック、軸になる登場人物の数が多く、細かい設定を犠牲にしても読者を楽しませようびっくりさせてやろうという、エンターテナーぶりがスゴい。種明かし的なトリックにサスペンスSF屈指の決め技であるアレを持ってくるあたりはご愛嬌だが、地下でだまされ迫害されている人民よりもむしろ、地上でその罪の意識にもがき苦しんでいる支配者階級により焦点が当てられているところは敬服。「支配するものは、支配されているものによって、支配されているのだ」と書いたオーウェルの「1984年」の影響、そして事実60年代冷戦時の世界がその世界観に近づいていた、その下で、この作品にはアイディアだけに終わらないディックの真摯な世界への目線を感じる。特にマス・メディアへの批判は痛烈だ。
 ディックによる、意外に正統派なディストピアものとして、特異な部分のある小説ではある。読み出したら止まらないスリリングなサスペンスものであるのはもちろんのことだが。