エドワード・ホッパーの絵は、20世紀アメリカの具象絵画を代表する１人である。しかし彼の絵は写真のように写実的という特徴ははあるものの、絵画的視点からみるとけして上手いほうではない。人物はロボットの様、塗りも滑らかではない、遠近感は歪んでいる。技術的に巧い人が意図的にデッサンを崩したようにも見えない。印象派の影響が強いが、そういった崩し方でもない。

だが、なぜかそれが返って奇妙なリアリティを与えていて、まるで絵の中にストーリーがあるようでなんともいえない味がある。そんな彼の絵は近年になり、今まで以上に世界的に高い評価を得てきている。

ホッパーの描きだす風景や人々はごく普通のありふれたものでありながら、孤独の影と一緒にそこに登場する人々の日常はまるでドラマのワンシーンのようだ。それは今私がもっとも写真で表現したいことであり、彼の絵は私の作品のお手本にもなっている。