著者はまず、短期間で「人財」を育てるためのヒントとして、過去に教育者として偉業を成し遂げたジェームズ・アレン、吉田松陰、小林虎三郎に言及している。そこから得られたのは、人間は、短所を指摘するよりも、才能や長所を伸ばすことで大きく成長する、ということ。著者はこの点をさらに深め、自らの経験やエピソードを交えながら独自の「人財」育成法を提示する。なかでも注目したいのは、経営者として、そしてビジネスパーソンとして欠かせない「人間性」に言及した部分である。人間性を磨くべき理由をあいまいにせず、具体的なビジネスの成果と結び付けて説くあたりは、さすがに百戦錬磨の著者である。著書と交流のある経営者たちのエピソードなども、説得力につながっている。
「スキルよりも人間性」「素直になる」「客を喜ばせる」など、常識的な内容が並んでいるが、それを裏付けるエピソードが優れている。いまどきのビジネス書では滅多にお目にかかれない骨太の経営論も、本書の魅力を増している。(土井英司)