千代紙大好き。
★★★★☆
表紙は日本橋「榛原」さんの「重陽」柄。放映後に問い合わせが多かった為なのかは知りませんが、現在、店頭でも文具等の形で復刻されている人気柄のようです。個人所蔵の千代紙や、戦後発行された千代紙文庫なども掲載されていますが、量的には、あまり沢山載っていません。主に榛原さんと谷中いせ辰さん所蔵のものがメインです。個人的には、いせ辰の「新版ほおずきづくし柄」(擬人化ほおずき達がお祭りなどで遊んでいる)が、特にツボに入りました。
写真は白黒も多く、カラー部分でもピントが浅くて、四辺がボケてるような芸術的観点重視の雰囲気。特に古いものが白黒写真だったりするのは、見ていて少しストレスが溜まります。そういう点では、デザインの参考になるとか、マニアックな方にもオススメ!とまでは言えませんが・・・。工程の各職人のこだわりや、千代紙を使った作品、時代やニーズによって色を変えて雰囲気を変える工夫など、色々な要素が各2,3ページで簡潔にまとめられていますので、コーヒータイムに手軽に手に取る一冊としては、充分満足出来ると思います。
また個人的には、アメリカ出身で千代紙研究家でもある、法政大学教授・アンへリングさんによる、千代紙の歴史がまとめられた巻末エッセイ「装飾という名の素敵な病」も感動的でした。千代紙を愛しつつも、これはいつか廃れていく日本文化かもと、ブルーになりがちな人には特に、是非読んで頂きたいエッセイだと思います。
ただし、感動しつつも、何事にも正確さを求め過ぎたい病民族としては、「装飾は病」とまで言ったのは、どちらかと言えば、機能性重視のモダニズム建築の祖オットーヴァグナーではなく、後続建築家アドルフロースですよね?とちょっと思いました。うーん。当時の建築美術界の状況や流れなんてとこから全て説明するような為の本ではないですから、省かれて当然とは思うのですが。なにか、建築に興味のない人にこの冒頭の表現だけで誤解されると、オットーちょっと可哀想なような・・・と思ってしまいました。