和菓子は江戸時代に花開き、中身が世界一面白い
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本書は、日本が世界に誇る無形文化財の1つである(と考えている)和菓子を取り上げている。なお、和菓子は意外にも明治時代に誕生した言葉である。理由を知りたい方は本書の冒頭を読むことを薦めるが、本書では便宜上、和菓子に統一する。
本書では、写真をふんだんに使用しつつ、写真に付け加えられた文章や解説もコンパクトにまとめられている。そのため、私のような素人でも、和菓子に関する3つのツボについて自然と好奇心を抱いてしまう。
・壱のツボ:菓銘を知って物語を楽しめ
・弐のツボ:内に込められた世界に遊ぶ
・参のツボ:意匠に四季を感じよ
本書の中で参考になった事柄は、弐のツボ(内に込められた世界に遊ぶ)である。
壱のツボと参のツボは、既に知っていた事柄である。前者は、名前から和菓子をイメージすることであり、日本人なら誰でも無意識のうちに行っていることである。また、後者も花鳥風月に恵まれている日本人ならば、季節を表す用語で四季を愛でることは当然のことである。
しかし、弐のツボは日本独特のものである。理由として、「江戸時代」をキーワードに2つある。それは、白砂糖と粋(いき)である。
白砂糖の登場により、和菓子は細かい細工と様々な色に加工することが容易となった。その結果、様々な種類の和菓子が百花繚乱の如く登場した。そして、江戸時代といえば江戸っ子の“粋”が流行した時代でもある。
贅沢をしてはいけないという政治風潮が庶民に広がると、服装と同様に菓子も文化として目立つ菓子ではなく中身で人を驚かせる菓子へと変貌を遂げるようになった。その結果、子持ち饅頭や福徳せんべいのような“粋”な和菓子が誕生し、遊び心や楽しみを提供してくれるようになったわけ。(中略)
“見てビックリ、開けてビックリ”という広告のキャッチコピーではないが、和菓子こそまさに“見てビックリ、開けてビックリ”の最たる例だと思う。日本人として、この無形文化財は世界に誇るものであり、アニメや日本食と同様に世界進出すべきだと考える。