また各章に登場する登場人物たちも、何もこの質問の応答者にばかりなっているわけではなく、皆それぞれにヴァイタリティーと、それに基づく落ち着いた酪農の理念と未来への夢を展開する。本の中にもそうした指摘があるが、どの村でもそこに1人や2人、こうした人はいるものだが、こうした一人一人の姿は、なかなかマスメディアのなかで伝わってこないのが現状であろう。場所は北海道だが、自分の近くにもこんな酪農家さんがいないかな、と探してみたくなる本であった。
酪農という題材を元に、
資本主義社会の低コスト至上主義があらゆる場面で生み出している、
「物」の品質の低下とそれに伴う犠牲が鋭く描き出されている。
BSEを発生させた原因はそもそもどこにあったのか?
安価な商品を提供、購買できればそれでよしとする、
私達人間にもはや可能性は残されていないのか?
酪農の厳しい現実は決して楽観できないが、
本書に登場する酪農家達はみんな幸せそうである。
何が彼らに幸福をもたらしているのか?
読んでいる者にまで幸福感をもたらす
彼らの生き方は酪農だけではなく、
加速し続ける資本主義社会の弊害に対する一つの打開策を提示している。
インタヴューは聞き書きという新しいスタイルで再現されており、
読んでいると話し手から直接語りかけられているかのような臨場感を覚えた。
話し方や方言から個性が浮かび上がってくると
理念や生き方まで話し方に表れているように感じられるのも面白かった。