この人の仕事に明確なスタイルはない。案件毎に別々の回答を出す。金欠ガールフレンドに頼まれた個性的な名刺(1枚1ドルで1枚ずつ制作可)、NYに遊びに来る故郷の友人にNYでのガールフレンドをつくるためのキャンペーンポスター(結果は成功)、といったものから本、CDジャケット、アパレルブランドのようなものまで、予算があってもなくても出てくる多彩なアイディア。しかも失敗作までわざわざ掲載し、失敗の理由まで書く。
これから独立しようとしているデザイナーに対するアドバイスや、お金の話し(例えばストーンズのアルバム制作で要した時間と得た収入)まで出ていたりする。
あちこちで受賞した本だけに、装丁も凝っている。赤い色の半透明なカバーを取ると、表紙の犬の顔が…。裏表紙の著者の顔が…。高校生のときの単語暗記で使用した下敷きがこんなことになるなんて…。小口の印刷や見返しの裏側、索引ページの写真といった細かいところまで目がはなせない。