まだまだ現役で使える。
★★★★☆
さすがに現在この本で勉強している人は少ないと思うが、本書がカバーしている契約総論の部分は法改正が少ない分野なので、十分実用に堪えうる内容となっている。旧字体で書かれているが、読み方は文脈から簡単に分かるものばかりなので支障は無い。内容についてはまあ、概ね通説に沿った見解ばかりなのでコメントしづらいところ。これまでの通説=ほぼ我妻説のことなので当たり前か。
かなり昔の本ではあるが、別に小難しい文句が使われているわけではなく、意義→要件→効果と、ビシッと明晰な文体で書かれた記述は非常に読みやすい。論点に関しても、結論→理由付けと簡潔ながら説得力のある解説がなされており、そのまま論文試験の論証に使えそうな言い回しばかりである(実際、現在でも予備校本の論証パターンは我妻本からとったものが多い)。
ただちょっと気になる所を一つ。我妻先生の民法講義シリーズには日常生活ではまず使われない「けだし」という言葉が多用されているが、これ本来は「思うに」という意味である。にも関わらず、文中で明らかに「なぜなら」の意味で用いられている箇所が多く見受けられる。国語辞典に載っている本来の用法からすれば誤用なのだが、法律学的にはありなんだろうか?よくわからない。