この本は、(大学の先生御用達の)有斐閣選書なだけあって、学術的で難解な部分がある。でも、少女漫画分析や摂食障害事例、ベビーM事件などの具体例を出していてあきさせない。
特筆すべきは、読者が限られているためか、けっこう「そんなん言っちゃってもいいの?」的なことをはっきり書いている点だ。例として「『ヤンキー』早婚の法則」(母親から十分な愛情を受けなかった娘が、早婚で母になり、また十分な愛情を娘に与えてやれず、「ヤンキー」の悪循環が起こる)などがある。
性同一障害についての記述で「当事者の立場は尊重するという前提に立って、あえて私が問いたいのは、ジェンダーが不快である場合、改変すべきは身体ではなく、ジェンダー社会の方ではないかということです」という主張に同感だ。その苦しみは本人でないとわからないのかもしれないが、戸籍や身体を改変してまで、「男」「女」というカテゴリーに入ることは幸せにつながるのだろうか?もっと自由な生き方はないのだろうかと疑問に感じてきた。何がベストかは今だわからないが、自らのセクシャリティとジェンダーについても同様に考えて見るべきなのだろう。