解析学全般を凝縮 特殊関数の解説豊富 !
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本書は、理工科系で学ぶ数学(解析学・物理数学)を概観した本です。実関数の微分、微分幾何学、実関数の積分(Gauss,Stokesの定理)、無限級数、複素変数の関数、常微分方程式、偏微分方程式、変分法、Legendre,Laplaceの球関数、Bessel,Neumannの円柱関数、Weierstrass,Jacobiの楕円関数、Fredholmの積分方程式、境界値問題(Dirichlet,Neumann)など、多くの題材から構成されており、特殊関数の解説が多いのが特徴です。あのВ.И.СМИРНОВによる大作『高等数学教程』と比べると当然の事ですが、それにしても各項目の解説は実に簡潔すぎる位にまとめられています。例題演習もありますが、十分な量とはいえません。各章末の問題は充実している方ですが、詳解は無く、計算結果と一部にヒントだけがあります。良く云えば、『無駄を削ぎ落として要点を凝視した解説』を記載しているのですが、大部分は他書による解説・演習の補充が必要です。本書で何か洞察を得た人は、同著者による本書の応用編があり、物理数学について非常に密度の濃い解説をしていますので、応用編も買って勉強すると良いでしょう。
1931年に数学の専門家ではなかった著者がこの初版を執筆していた事は驚愕すべき事です。当時の旧制高等学校や工科の大学生達も、文献も少ない当時、自らの頭脳だけで問題解決を努力した事でしょう。当時の数学力の高さを垣間みる事が出来ます。