a^2+b^2=c^2からds^2=Σg_ij dx_i dy_jに至るまで、ピタゴラスの定理に関する数学を概観できる
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本書はピタゴラスの定理(a^2+b^2=c^2)に焦点を当てながら、古代バビロニアから現代に至るまで数学の発展やエピソードを紹介した数学史本です。紀元前の人たちの数学のレベル、ピタゴラス・アルキメデスに関すること、"暗黒時代"においてアラビア人の果たした役割、幾何学から代数幾何学〜微分幾何学〜非ユークリッド幾何学へと発展する様子、そして相対性理論に至るまで、古代から現代に至るまでの数学の歴史が語られます。
途中、ユークリッドの定理の証明を収集したE.S.Loomisに関すること、及びそのコレクション(371個!)のうち面白いモノが紹介されます。そしてピタゴラスの定理の変形についても語られます。そして、自然に2次元→3次元→多次元→無限次元(ヒルベルト空間)へ、そして平面の世界(ユークリッド幾何学)から球面の世界(非ユークリッド幾何学)へと自然に読者を誘います。こうしてc^2=a^2+b^2の計量の世界(ユークリッド幾何学)からds^2=Σg_ij dx_i dy_jの計量の世界(一般相対論)に至り、大団円を迎えるわけです。このように本書を通じて「具体的モノから抽象的コトへ」の視点転換が自然に学べます。(^-^)v
本書の数式を"楽しむ"ためには、難関大学(理数系)の受験生〜大学教養学生(理数系)レベルの素養は必要でしょう。(大学入試問題っぽいものが結構あります) "マス北野"ネタが好きなら大丈夫でしょう(笑)。物理数学の副読本としても良いかも(→「無限のなかの数学」(志賀浩二)「無限と連続」(遠山 啓)もGood)。大学院生以上の人には少し易し過ぎるかも?
(追記)本書に出てくるような"図によるピタゴラスの定理の証明"や"π^2/6=1+1/2^2+1/3^2+…の幾何学的意味(なぜπが出現?)"のような図形的アプローチが好きな方には「証明の展覧会 眺めて愉しむ数学」もオススメできます。