インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

比較歴史制度分析 (叢書 制度を考える)

価格: ¥7,140
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: エヌティティ出版
Amazon.co.jpで確認
名著です ★★★★★
中世の時代からヨーロッパの商人は個人主義的で、商売相手が人を騙した過去の有無に関係なく取引をする。信用情報が得難かったからだ。けれどもこのことは、騙す騙さないといった個人的な商売上の前評判に関係なくため、誰とでも広く取引ができる市場制度へとつながることになる。
コミューンに住んでいたヨーロッパ人の交易がままならなかった。代理人は横領するし、住民さえも平気で略奪する。おまけに共同体の裁判所はよそ者に不公平だった。
著者は史実から自治体ごとの「共同責任体制」を見出した。不正を働いた商人が属する共同体と同じ共同体に属する人間の資産を没収することで、不正に対する損害を補う制度だ。各自治体は続々と共同責任体制に加盟していく。その「共同責任体制」での商人や裁判所の「行動」をゲーム理論を巧妙に使って説明し、「共同責任体制」での「制度」をモデルで再現している。当然これは近代国家成立する以前の話だ。よそ者には不公平だった共同体の裁判所が公平な裁判所に変身するという過程は圧巻だ。
「共同責任体制」で交易が盛んになり、それが中世後期ヨーロッパの商業革命や富の蓄積へと繋がるが、同時に、個人主義的な取引も「共同責任体制」の中で発展し拡大し、誰とでも広く取引ができる市場へと進化していく。
「制度」は外からは観測が難しいが、史実から着想を得てそれをモデル化し、ゲーム理論を使い制度の中身を解明し、また史実を使ってモデルの修正を行っていく。最後に別の史実でモデルの検証する。これが著者の「比較歴史制度分析」という方法論だ。
著者は経済と歴史の2つの専門をもつだけあって、専門外の人間に専門のことを説明することは上手い。読むのに骨が折れるが、専門外でも理解できる専門書だ。翻訳も素晴らしい。この本はいずれ古典になってもおかしくないような名著だ。