その第1巻である本書には、京極夏彦、大沢在昌、林望、真保裕一、小池真理子、菊地信義ら17名の書斎が登場。「2DKのマンションが古本屋の倉庫のようになっていた」という関口苑生の仕事場から始まり、「コンピューター技師の研究所」のような井上夢人の書斎まで、著者の精密かつ温かな雰囲気のイラストとユーモアたっぷりの文章が、まるで読者自身もその場に居合わせているかのような気分に浸らせてくれる。
上段の本は双眼鏡でのぞくというほど背の高い書棚が並ぶ阿刀田高の書斎。「どこかミステリアスで触れ難い雰囲気が漂っている」山田風太郎の書庫。書棚の裏に便器が隠されている佐野洋の仕事場。個性的な書斎の数々に驚嘆させられるのはもちろん、自分の城ともいえる書斎での作家たちが、いずれもリラックスした様子で意外な一面を見せてくれるのもファンにはうれしい。
本書は「書斎」というきわめて私的な空間を旅するバーチャル・ツアーだ。作家の私生活や創作の秘密をちらりと垣間見ることのできる楽しさがたまらない。ちなみに第2巻に登場するのは鹿島茂、明石散人、二階堂黎人、泉麻人、野沢尚、喜国雅彦、内藤陳ら17名。第2巻にも本書に負けず劣らず期待をそそる名前が並んでいる。(中島正敏)