すい星のようなデビューを飾った2002年以来、“聴かせるアーティスト”として成長中のノラ・ジョーンズ。その様子は、彼女の2作目のコンサートDVDとなる本作『Norah Jones and the Handsome Band: Live in 2004』(2003年リリースの『Live in New Orleans』に続く作品)にハッキリと刻まれている。この才能あふれるシンガー兼ピアニスト兼ソングライターは、まだ大物ぶった態度を取ることに慣れていないようだ。やや表情が硬いながら(拍手喝さいに困惑しているような様子)、人懐っこい魅力を振りまくジョーンズ。気取らず、親しみやすいステージには好感が持てる。音楽にも同じことが言えそうだ。ジョーンズと献身的なバンド(プリテンダーズやポール・マッカートニーのバンドのメンバーだったギタリストのロビー・マッキントッシュも今回参加)は、ナッシュヴィルのライマン公会堂で、地味ながら味わい深いショーを展開。セカンド・アルバム『Feels Like Home』からのチューンに加えて、グラミー賞を獲得した「Don't Know Why」も披露し、敬意に近い雰囲気をもってオーディエンスに迎え入れられている。カバーのチョイスも絶妙で、ジョン・プラインの「That's the Way the World Goes 'Round」、トム・ウェイツの「The Long Way Home」、グラム・パーソンズの「She」などが登場(「She」はボーナス・トラックのひとつとして収録。その他、2本のビデオと3本の“ミニ・ドキュメンタリー”も用意されている)。しかし、ショーが俄然盛り上がりを見せるのは、多彩な顔ぶれのゲストが現れたときだ。ギリアン・ウェルチとデヴィッド・ローリングスはタウンズ・ヴァン・ザントの「Loretta」をジョーンズと共に美しく歌い上げ、大ベテランのドリー・パートンはベーシストのリー・アレキサンダーによるブルーグラス調の「Creepin' In」をジョーンズとデュエット。特に後者は、間違いなく今回最大のハイライトだ。輝かしいオーラを放ち、エネルギーに満ちあふれて美声を披露するパートンは、まさにスターそのもの。ジョーンズもパートンに付き従う。さて、ここからが本作唯一の問題点。パートンがステージを去ったあと、ジョーンズたちはその埋め合わせをしなければならなくなるのだ。さすがの彼女たちも、これには少々手こずっている。(Sam Graham, Amazon.com)