本書は平成元年に出版されたものの復刻です。『先代旧事本紀』は古代史研究の重要文献でありながら、なかなか一般の目に触れません。一般読者の関心は「六国史」よりも高いと思われる(少なくとも僕はそう)のに寂しい限り。それだけに復刻を知って、喜び勇んで買いました。読んでいて『記紀』にない記述に出会ったときはうれしかった。特に以前から関心のあったニギハヤヒの伝承は興味深かったです。全10巻の内容は以下の通り。
1巻「神代本紀」「陰陽本紀」:天地開闢~イザナギ神話。2巻「神祇本紀」:誓約神話~スサノオ追放。3巻「天神本紀」:物部氏の祖ニギハヤヒがニニギに先立って降臨したとある。他、出雲の国譲り。4巻「地祇本紀」:出雲神話。八俣大蛇退治~大国主命の神話。5巻「天孫本紀」:ニギハヤヒの死と、その末裔である物部氏、尾張氏の系譜。6巻「皇孫本紀」:日向三代~神武東征。7巻「天皇本紀」:神武天皇~神功皇后。8巻「神皇本紀」:応神天皇~武烈天皇。9巻「帝皇本紀」:継体天皇~推古天皇。10巻「国造本紀」:全国135国の国造家の祖先伝承を集成したもの。
特に注目されるのは、「天神本紀」と「国造本紀」。前者はニギハヤヒの伝承を多く含むことで知られ、後者は他の文献に見られない全く独自のもので、いずれも古い伝承を伝えるものとして信頼されています。が、それ以外の箇所にも独自の伝承が散見できます。ぜひ御一読を。