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美術史の基礎概念―近世美術における様式発展の問題

価格: ¥10,500
カテゴリ: 単行本
ブランド: 慶應義塾大学出版会
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新たな方法論の実践 ★★★★☆
クラシックからバロックへの発展を5つの対概念として提示したヴェルフリンの代表作。それまでの美術史の方法論に対する意義を唱え、新たな方法論を提示しようとする意欲作。ヴェルフリンは、従来の様式概念を個人の気質(もしくは時代的気分、民族的気分)の表出にすぎないとし、これでは芸術家の気質の分析はできても、芸術作品の成立については説明できないと考えた。そこで、近代的視覚の成立を芸術学の最も根本的な課題として示すべく、本書が書かれたのである。
であるから、本書はまず第一に、新たな方法論の実践として読まれるべきであり、クラシックとバロックを5つの対概念のもとに分類し理解するというのは本末転倒である。ヴェルフリンの方法論的特徴は、美術作品の形態的特徴を徹底的に分析し、それらの特色がそれ自身の内的必然性によって変遷すると考える点にある。アロイス・リーグルとは異なり、ヴェルフリンは美術作品を生んだ社会的背景や思想との関連をあまり問題としない。
「視覚的な層の暴露」という課題を前に、ヴェルフリンは<絵画>を中心に論を展開している。『建築心理学序説』(1886)、『ルネサンスとバロック』(1888)の二作が<建築>を主題としていたのに対し、本書(1915)では主題が<絵画>へと移行しているのである。これは、前二作が心理学的考察法に依拠し、人間の身体的要因に重点を置いていたのに対し、本書では視覚的な効果が大きく取り上げられるようになったためであると考えられる。
ヴェルフリンは対象の分析から、様式発展は「人間の精神構造の法則性」(本文中では「装飾的感情」として示される)に基づくものとし、クラシックからバロックへの発展は、本書の分析対象となる16世紀と17世紀のみならず、それぞれの時代にこの発展段階を見出せると考えた。ヴェルフリンの方法論と様式観を知る恰好の書といえる。