このときはまだTheが付いていなかったのだ
★★★★★
オアシスのデビュー当時のインタビューで、ノエルが「今(1994年)のUKのバンドはどいつもこいつもクソだ。俺達以外で良いバンドはプライマル・スクリームとヴァーヴくらいだな」みたいなことを言っていたけれど、あながちそれは間違っていなかったのかもしれない。レディへは「ベンズ」の発表前で、ラーズは既に解散。マイブラもほぼ凍結状態だしね。
で、当時のヴァーヴがどんなにヤバいバンドだったかを伝える問答無用の傑作1stがこれ(EPも必聴)。ソニック・ユースやバットホール・サーファーズの系譜ではなく、かといってマイブラの系譜でもない、本当に斬新でカッコいいノイズとサイケデリアが鳴っていていつ聴いても痺れるのだけれど、けっきょくはリチャードの歌が凄い。薬中に落ちぶれようがポップスターに成り上がろうが、この男の歌の力は変わらず圧倒的だ。
彼らの本当の姿
★★★★★
オアシスのノエルが褒め称えたことと、
アーバン・ヒムズが売れたことで
王道的なロックバンドとして
一躍有名になった感のある彼らですが、
元々はサイケデリック+ソウルフルなサウンドを奏でる
かなり異色なバンドでした。
個人的に、アーバン・ヒムズはヴァーヴ名義の
リチャードのソロアルバムと言ってもいいと思っています。
「come on」「rolling people」等の、
少し古めの曲に以前の痕跡を見て取れはするものの、
あのアルバムに表現されているのはリチャードの
個人的な世界観が大半を占めています。
非常に優れたアルバムだとは思いますが、
ギターのニックが曲作りの骨組みの段階から参加していたら、
あのような形にはならなかったと思います。
このファーストアルバムには、彼らがまだ20代前半と言う若さで
作り上げてしまった、サイケデリックでメランコリックな、
極彩色の世界が封じ込められています。
リヴァーヴやディレイなどの反響系エフェクターを多用して
広大で色とりどりな世界観を表現するギター、
何かに取り付かれたように、高らかに声を「鳴らす」ヴォーカル、
そしてそれを支えるグルーヴィーなリズム隊。
アーバン・ヒムズからヴァーヴを知った人には、
かなり違和感と驚きのある内容だと思いますが、
彼らの本性はこちらにこそあることを、
その完成度からも、聴いてみれば分かると思います。
サイケ時代
★★★★☆
97年発売の『Urban Hymns』が知られる今はなき彼らの記念すべき
デビューアルバムです。
『Urban Hymns』ではOasis顔負けのクールなUKロックで世間の注目
をさらった彼らですが、この頃の彼らはギターノイズ響かせまくりの叙情的(?)な
いわゆるギター・サイケバンドで本当に同じバンドなのか、その変貌振りには驚かされます。
それでも個人的には(8)(9)なんか良いと感じましたし、そうでなくても一枚聴きとおして
聴き心地のいいアルバムというのが率直な感想でした。
『Urban Hymns』のようなUKロックを期待して聴くと肩透かしをくらうでしょうが、
原点に戻るということで、彼らが好きな人は聴く価値があると思います。