官能小説の完成系を感ずる
★★★★★
藍川京は女性としての細やかさと官能描写の旨さとで、官能小説という分野での一つの完成系を示したように思う。もう少し若い頃の描写のみずみずしさはないようにも感じるが、ストーリー展開と官能シーンとの違和感が全く感じられないほどに、見事にひとつの官能世界を形作っている。古希を迎えようとする男と若い女との性愛、同世代の男達との性愛のあり様の違いも旨く描いており、若い女と三人の男、それに絡む昔の女性との関係性も見事に捕まえている。古希を迎える男への年の差を越えた愛情もうなずける。無理なくなるほどと思わせるあたりの描写は実に旨い。中高年向け官能小説という見方もできるが、アメリカ的個人主義を取り込んだような、官能小説の到達点を示したもので、藍川京の代表作になるだろうと思われる。これはおススメである。