色素性病変の病理
★★★★★
待望のメラニン産生病変の病理の入門編である.序に書かれているように母斑やメラノーマについては著者の師である真鍋氏や,最近では斉田氏なども優れた教科書やモノグラフを執筆しているし,外国語で書かれた皮膚病理の本も枚挙にいとまがない.みき先生もこの点をふまえてメラニン産生細胞とは何か,母斑・メラノーマの基礎の基礎について丁寧に解説することを心がけている.”今さら人に聞けない”基本中の基本を丁寧に解説するというこの本のコンセプトがこの巻でも継承されていて助かった.日常の診断では母斑の診断はmelanocytic nevus, intradermal typeで済まされることが多いが,母斑の発生部位,母斑細胞の分布の仕方を考慮に入れてもう少し詳細に鏡検し亜型も記載すべきであると教えられた.SuttonやSpitz母斑などは日常的には曖昧なままで過ごしているのかもしれない.少し全体のページ数が少ないが,具体的なメラノーマ事例や診断困難例をCase Study的に紹介したほうが良かったのではないか?というのが通読しての感想である.続刊は炎症性皮膚疾患との予報であるので楽しみに待ちたい.できれば皮膚軟部腫瘍やリンパ増殖性疾患も別巻としてまとめて欲しい.