『ヒラリーとジャッキー』その姉妹の物語
★★★★☆
本作は、デュ・プレのファンが期待するような伝記映画ではない。
師のロストロポービッチも夫のバレンボイムも影が薄く、チェロの演奏が
さほど出てくるわけでもない(バックには有名なエルガーの協奏曲が流れるが)。
この作品は、あくまでヒラリーとジャッキーの姉妹と家族の物語。
(それだけにすべてが事実に基づく、と考えない方が良いと思う)。
多少ドロドロしたところもあるが、そういう目で見ると高く評価できる一作だ
(アカデミー賞にもたくさんノミネートされた)。
もちろんBGMのジャクリーヌ本人の演奏も素晴らしいが、チェロをまるで
バイオリンのように弾きこなしたジャクリーヌの姿を、うまく演じた
ワトソン(あまり好きな女優ではない)もなかなか良い。
彼女の人生と才能は不幸の上に完成された
★★★★☆
まず、凡才な姉と天才な妹というありがちな設定と言い捨てられる映画ではありません。
ほぼ実話であることは勿論ですが、名声を手にした世界的チェリストがまさかこのような壮絶な人生を歩んだとはにわかには信じられない、とても衝撃的な話です。
特に印象的だったのは、海外公園で通訳の人に「私はチェリストになんかなりたくなかった」ともらしたその本音。結局それは誰にも伝わることがなかったわけですが、そんな想いを抱えて彼女がその最高のチェロ奏者の才能に翻弄され、人生のほとんどを狂わされて生きたかと思うと言葉もありません。
まさにそれこそこの作品の本質です。この映画は、微細な点でいえばまるきり事実と同じというわけにはいかないですが、それでもまさに「ほんとうのジャクリーヌ」を浮き彫りにした映画といえるでしょう。
それでもなおのこと悲しいのは彼女の奏でるチェロの音が美しく聴こえてしまうこと。オーケストラではなく、彼女の不幸な人生を背景にしてさえやはり儚くも美しいのです。また彼女がチェロを弾く時の映像感覚、色彩感覚も見事で、彼女の悲愴が一層伝わってきます。
「ただジャクリーヌの真実の姿を知ってほしい」
そういう、原作者や、この映画の監督の想いが如実に現れてる痛切な映画です。
音楽に興味のある方は勿論、やはりそれ以外の方々にもこの映画を観てジャクリーヌという人物を知ってほしい、そう思える映画でした。
二重?の嫉妬
★★☆☆☆
原作にジャクリーヌはレイプされたことをヒラリーだけに打ち明け
口止めしたと書いてあります また原作の末尾にジャクリーヌは あまり
練習しなかったとあります 晩年の難病の原因は 過度の練習だと思っていました
まさかヒラリーが毒を盛ったのではないでしょうね
ヒラリーについては別の解決方法があったのではないでしょうか
ヒラリーのしたことは家族の恥を手段とする売名行為です
「胸のすくような」からは程遠い復讐です
ヒラリーの娘など生前のジャクリーヌの知人たちは実際の彼女と違うと異議を唱えているようです
ジャクリーヌには子孫がいないため 彼女の名誉と真実について誰も闘わない
世界中がヒラリーに言いくるめられているのが残念でなりません
家族の絆、姉妹の絆
★★★★★
後半、ジャクリーヌは見舞いに来た母と父に
一見理不尽に切れるし
どんなに体が衰えても心身で頼りにすることは全くない。
しかし、前半生のこの両親をもう一度思い出して、納得できた。
才能が行き詰まった姉は心理的に見捨て
かたや才能が伸びた妹には練習漬けの毎日で
下着の洗濯ひとつできない「楽器バカ」にしただけで
あとは放り出してしまっているのだった。
(原作はまたちょっと違っているのだが)
自分も優れた芸術家として生きてきたが故に
我が子に対しても、重視する価値はなによりかにより
「才能」である母。それを止めず協力する父。
両親の行動は、無意識のうちにこどもたちに
「天才になれ、なれないのなら天才の養分になれ」
というオブセッションを刷り込んでいる。
この二人の「悪気ない」仕打ちが
映画では随所にさりげなく、しかしていねいに描かれている。
刷り込みのため
妹は普通の女性としての自分を誰も愛してくれない不安から
精神のバランスを崩し
姉は天才の妹が望むなら、懊悩しながらも結局自分の夫を捧げてしまう。
どっちも病んでいる。
病んだ心をぶつけ合いつつも
最終的に理解し合えるのもまた苦しみを共有したお互いだけなのだった。
解説やコピーには「家族の絆」とあるが
この映画は、ともに生き抜いた姉妹の濃い絆の話と思った。
誰か知らなくても構わない
★★★☆☆
エミリーがいい演技してるらしい、というので見てみました。
このチェリストについては全く予備知識ナシだったけど、天才がゆえ訪れる孤独と愛への渇望が痛いほど表現され見応えある仕上がりになっていました。
非凡な才能に恵まれ、成功の階段を駆け上る彼女がどうしても得られない物、自分に向けられる無償の愛。実際は愛されているのに信じられず、確かめるためわがままを言って相手を試す。とても悲しい人ですね、見えないものを捜し求め自らを追い込んでいく姿が痛い。
それにしてもエミリー・ワトソンいい役者です、大好き。