集団主義と個人主義の間〜生誕200年〜
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2009年はプルードン生誕200年にあたるが、それに相応しい出版物だ。古書で入手しやすかった本のリニューアルとはいえ、貴重なアンソロジーだと思う。
プルードンは集団主義と個人主義の間に立ち、流通の変革を目指したという意味で、(双方から批判されるのでわかりにくいとされるが)極めて今日的思想家であり実践家だ。
思想的には、アンチノミーを安易に止揚しない点で、ヘーゲルやマルクス以上に重要だし、柄谷行人によるカント再評価を先駆する。
本書では、断片的とはいえ、ナポレオン三世によるクーデタに敏感に反応したプルードンの政治学的にも貴重な証言(未邦訳)を比較的多く含むので、経済的な思想よりもプルードンの後期の政治思想を検証する上で役に立つ。
興味を持った方には古書ではあるが、ぜひ同じ編者による『プルードン研究』を手に取っていただきたい。
ちなみに表紙は同郷の画家クールベによるものだが、クールベとプルードンの親密な関係は、ゾラとセザンヌの関係以上に重要ではないかと思われる。
プルードンの思想をプルードン自身の言葉で紹介
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アナーキズムの代表的な思想家の一人、プルードンのアンソロジーである。
プルードンは生前に数多くの著作を発表したが、日本語に訳されていない重要著作は多い。その意味で、未訳の著作の断片を読むことができる本書の意義は大きい。また、プルードンは、「財産は盗み」といいつつ、私有財産を否定せず、「アナーキー」といいつつ、「秩序」を重視するなど、決してわかりやすい思想家とは言えない。しかし、彼が追求したテーマを彼自身の言葉で紹介した本書を一通り読めば、その真意が見えてくるだろう。
日本ではまだまだアナーキズム系の思想家は正当に理解されているとはいえない状況なので、本書をきっかけにアナーキズムへの関心が高まることを期待する。