ブレンデル宇宙、満開。
★★★★☆
この曲はギレリスの名盤を持っていた。
その純粋音楽として結晶した名演奏に満足していたので、
他の演奏家によるアルバムを聴く意欲がなかった。
でもブレンデルの「ます」は
ギレリス盤とはまったく違った魅力を持っていた。
ピアノ五重奏としての拮抗やまとまりが、すばらしい。
楽譜を見ながら、各パートの動きを確認しつつ聴きたくなるような演奏。
ブレンデルだけが録音時に60歳代で、
後のメンバーは、30代か40代と若く、
特にヴァイオリンは本当に伸び伸びと演奏していて
曲の個性に合っている。
録音も音が決して団子になることがなく、
自分が彼らの真ん中に立って
演奏を聴いているような気持ちになる。
見事なブレンデル宇宙であり、シューベルト世界。
アンサンブルの良さは、次のモーツァルトでもそのまま持続し、
メリハリの効いた心地よい演奏を聴かせてくれる。
「ます」とのバランスで、短調作品が選ばれているが、
この曲はそれほど重々しくない曲想なので、
二人の作曲家の作品が並ぶバランスとしてとてもいい。