【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:富田恭彦/〔著〕 出版社名:角川学芸出版 発売所名:角川グループパブリッシング(発売) シリーズ名:角川ソフィア文庫 SP G-105-1 発行年月:2009年06月 関連キーワード:カガク テツガクシヤ カシワギ タツヒコ ノ タボウ ナ ナツ カガク ガ ワカル テツガク ニユウモン カドカワ ソフイア ブンコ G-105-1 かがく てつがくしや かしわぎ たつひこ の たぼう な なつ かがく が わかる てつがく にゆうもん かどかわ そふいあ ぶんこ G-105-1、 カドカワガクゲイシユツ カドカワグル-プパフ 0946 かどかわがくげいしゆつ かどかわぐる-ぷぱふ 0946、 カドカワガクゲイシユツ カドカワグル-プパフ 0946 かどかわがくげいしゆつ かどかわぐる-ぷぱふ 0946 夏間近、京都のとある大学-科学哲学者・柏木達彦が午後の2つの授業を終えて研究室に戻ると、物理学専攻の女子学生、咲村紫
知的好奇心を刺激する
★★★★☆
哲学を専門とする著者による、科学哲学(?)入門書。
著者自身がモデルとなっている科学哲学者柏木達彦と女子大生との対話形式で、現代思想の主要なテーマを平易な言葉で語っている。
トマス・クーンのパラダイム論からデヴィットソンによる概念相対主義の批判、ソシュールの構造主義、ローティのエスノセントリズムと、文庫本サイズながらその論旨展開はサクサク進んでいく。
全体的に、議論の外堀を丁寧に埋めていくというよりは、主な思想や議論を分かりやすく伝えることに主眼を置いている。幅広いテーマ設定で、これは知っておいた方がいいという内容だったので、初学者には非常に有益だと思う。
正直、構造主義や言語哲学の基礎知識が全く無くても軽く読みこなせるかどうかは疑問だったが、現代思想の一端に触れるとともに、より深く知りたいと思わせるような内容だった。
難しいことをやさしく語る難しさ
★★★☆☆
科学哲学の思弁を、できる限り平易に紹介しようとした本書の論述はさて、どこまで成功しているだろうか。科学哲学の研究と伝授を本業とする大学教授と、科学哲学のキモが直感的にわかってしまう女子大生との対話をメーンストリートとする対話の「創作」とでもいうべき1冊。とはいえ、この創作は必ずしもうまくいってはおらず、科学哲学の概要の解説というには、論述がごてごてしているように思う。英米流の分析哲学のあらましが呑み込めていないと、この思弁はフォローしがたいという難点もある。それと、あえて言えば、アカデミズムの内側にいる方にありがちな「気どり」が目立つ。その気どりが、本書の挑戦的な意図を弱めているのではないだろうか。
"Science is a self-correcting process"(科学とは(エラーの)自己修正過程である)に尽きると再認識
★★★★☆
本書は「科学哲学者 柏木達彦の多忙な夏―科学ってホントはすっごくソフトなんだ、の巻」(1997)を大幅改訂し文庫化したものです。科学哲学を専門とする大学教授と女子学生(と同僚の数学教授)の対話を通じて、科学哲学の基本問題について紹介する小説になっています。クーンの"パラダイム論"で話を終わらせず、そこからドンドン話を進めていきます。(途中「なんて情緒的(非論理的)な議論なんだろう」と"違和感"を覚えた箇所は少しありましたが、概ね愉しみました。そういう訳で続編の文庫化も期待してます!)
特に面白かったのは「現実の理解における要点は"先入見"と"整合性の追求"の2つに尽きる」という処。その話で出てきた「解釈学的循環」("部分"の理解は他の部分(つまり"全体")との関係に依存する、しかし"全体"の理解は各"部分"の理解がないと決まらない)という言葉は面白かったです。これは「世界は分けてもわからない」での議論を彷彿させました。("contents"と"context"は独立には決まらないということ) この"整合性の追求"の下りは、物理屋としては"自己無撞着"(self-consistent)という言葉を想起させる話で愉快でした。(そして"先入見"はself-consistent解を求める際の"初期値"に相当するんじゃないかな?)
科学が"尤もらしいこと"を予測する手段であり続けるためには、科学がself-correcting & self-consistentなプロセスであること、つまり"flexibility"(ソフトさ)が求められているんじゃないかな、と再認識しました。(Carl Saganの名言"Science is a self-correcting process."を思い出したのでした) 福岡伸一流に言えば、科学体系も「動的平衡」の範疇に入るんでしょうね。