ラグピッカーズ・ドリーム
価格: ¥2,621
ダイア・ストレイツの名声が絶頂を迎えていたときでさえ、マーク・ノップラーの音楽は幅広い見聞をたびたびのぞかせていた。それは、その流ちょうで饒舌(じょうぜつ)なギタープレイと同じくらい変幻自在な世界観に裏打ちされたものだった。2000年リリースの前作『Sailing to Philadelphia』でもノップラーは同様の音楽と詩心を求め、さらにはそこから生まれる驚きとしなやかささえ追求していた。
爽快なオープニング曲「Why Aye Man」は、本作のトーンを大きく決定づけている。北イングランドのパブで交わされる言葉とネイティブ・アメリカンの詠唱を同時に描き、その一方で、サッチャーの政策による経済難民たちが祖国の奥深くでブルーカラーの仕事を強いられていることを嘆いている。そこからノップラーはリスナーをジョビンを彷彿させるラウンジ系のナンバー「A Place Where We Used to Live」へ引きこむが、それだけにとどまらず、ロジャー・ミラーへのトリビュート「Quality Shoe」に立ち寄らせる。さらに「Devil Baby」では、サーカスの余興に登場するフリークスたちの淡々とした滑稽さを描いている。墓地のフォーク・ブルース「Marbletown」では、穏やかなアコースティック・ギターソロのお手本を聴かせてくれる。また、歯切れのよい「Coyote」はワイリー・コヨーテからその気立ての良さをインスパイアされている。ほかにも、本作にはまったく異なる文化や歴史をさりげない鮮やかさで結びつけるノップラーならではのナンバーも収められている。そうしたナンバー、お得意の気だるいブルース調ギターソロをフィーチャーした「Fare Thee Well Northumberland」と「You Don't Know You're Born」、素朴な「Hill Farmer's Blues」、カントリー風の「Daddy's Gone to Knoxville」は、本作にささやかな勝利をもたらしている。(Jerry McCulley, Amazon.com)