そして、初めて志村さんの着物を見たのは旅の途中のとある地方の美術館でした。思いもかけずめぐり会ったその繊細で美しい着物の前で、しばらくたたずみあきることなく、その色たちの奏でる世界を堪能したのでした。
「記憶の底から、機の音が聞こえる」・・80年も前の機の音「ちょう、はたり」その音を聞きながら生きてきた。 歴史の深みと、物事の本質を追求してやまない人。志村さんは、ウイリアムブレイクや、ゲーテやシュタイナーの表現するところの宇宙や、精神、眼に見えないものの表す世界を色で表現しようとしている人なのではないかと思います。
その着物のように透明感のある文章なので、志村さんの文を読むときは背筋を伸ばし、心して読むようにしています。過去からの生命の歴史と自然を、色を通して感じられるようなそんな文章です。
私の若い比の自分の夢は、軽くて、なににでも変化する、美しく繊細な羽衣のような布を作りたいということでした。
志村さんの布はまさにそのような天空をまう布です。そして、その羽衣のような文章。
織りのリズム、色の音色のなかで紡がれた、美しい旋律の随筆をぜひぜひ、お読みになってみてはいかがですか!!