チェコ史スロヴァキア史の入門にお勧め
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世界史の教科書ではいたし方ないことですが、大国の動きが中心になっています。
そんななか今回出版されたこの一冊は、ともすれば分かりづらい動向をすると見られる地域を、分かりやすく説明してくれます。
構成はチェコとスロヴァキア史の最初から現在に至るまでです。満遍なく解説がありそして立場も中立であるところが良いです。理解の助けになるよう地図、写真、年表、家系図もありますが、これは同地についてより深く知ろうとする場合のちのちまで活用できます。
特に優れているのは中世の後半部分です。筆者の専門は確かにこの時代であります。王位の継承、当時の時代背景はやや複雑であるのですがそれを分かりやすい文で説明しています。
ただし、少し惜しい点を上げればスロヴァキア史の解説が少ない点です。日本においてまだまだ研究の進んでいない分野であるのでここにおいて記述がもっとあればより画期的な著作になりえたと思えます。
とはいえチェコとスロヴァキアの歴史を知ろうとするものにとって、この著作で展開される、筆者の中立的な観点、分量配分の公正さを考え合わせるとをお勧めの一冊です。