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お言葉ですが…〈別巻3〉漢字検定のアホらしさ

価格: ¥2,310
カテゴリ: 単行本
ブランド: 連合出版
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失われてしまった日本人の知恵を村の古老から教えられるような厳粛な気持ちになる ★★★★☆
 文芸春秋社から出ていた『お言葉ですが…』シリーズの続きを連合出版が〈別巻〉という形で引き継いだものの第3弾。様々な媒体に掲載した文章や、書き下ろしの論考を集めています。中には90年代に書かれたものもありますが、内容は古さを感じさせません。

 痛快なのは表題にもなっている「漢字検定のアホらしさ」。
 漢字に関して造詣が深い高島先生だから、終戦後には漢字全廃論も掲げられたことのあるこの国で、漢字検定ブームを契機に漢字が世人の注目を集める現状はそれなりに評価されているのではと、勝手に思い込んでいましたが、さにあらず。
 そもそも検定試験の問題文は誤りが多いという事実を先生はあげています。まさに出題者自身が漢字のことを分かっていない検定試験のアホらしさ。
 また、文章全体の中でその漢字がふさわしい位置を占めるかどうかを考えずに、日常お目にかかることも使うこともまずない小難しい文字(例えば「謁(まみ)える」、「氾(あふ)れる」など)を試験に出るからといって覚えたところで、意味がない。そんな高島先生の、バランス感覚あふれる指摘に大いにうなずきました。

 えとの成り立ちを解説した「十干十二支(じっかんじゅうにし)」も興味深く読みました。
 丙午(ひのえうま)という表現の中に「火(ひ)」や「兄(え)」という意味が込められていることや、還暦は60歳の「誕生日」に迎えるのではなく、60歳の誕生日がある年の元日に迎えるものなど、目の前にありながら見落としていた事柄に気づかされたような思いを味わいました。

 「国破れて山河あり」で知られる杜甫の「春望」を、中国語を知らずに日本語だけで解することの危うさについて記した箇所は、ぜひ高校時代に読みたかった、そして現役の高校漢文教師の皆さんにぜひ読んでもらいたいと思うものです。

 忘れられてしまったかつての知恵を村の古老から伺うような思いがする一冊です。
心強い健筆ぶり ★★★★★
題名にもなっている名連載が終了してから随分たつ。
本著は、あくまで別巻であり、嘗ての名コラムの再録や加筆自体は存在しない。
どちらかというと、高島俊男氏の論文集といった体裁になっている。

それでもなお、各所で発表してきた各種原稿の水準は、安定して高いのは流石に心強い。
書の副題にもある「漢字検定のアホらしさ」は、醜聞の後に頻発した検定批判の中でも、
群を抜いて優れている。

とはいえ、本著の中で「頓死」することに興味を持っていたことが少し心配になる。
「命長くして恥多し」とは言うが、後進に多くの物を残すことも、先学の義務ではなかろうか。
漢字検定のいかがわしさ ★★★★★
今回も漢字を中心とした日本文化と中国文化にまつわる目から鱗が落ちる楽しい話題に満ちています。
特に書名ともなっている「漢字検定のアホらしさ」は、必読で、秀逸です。
漢字能力検定が、現実的でなく、実用的でないだけでなく、
漢字の使用例に誤りがあることが指摘されています。
例えば、「方に」を「マサニ」と読ませる文例が、
「列車が方に出発するところ」では、意味をなさない。
「方に」は「したばかり」という語感だからです。
「正に」か「将に」と書くべきだろうが、「まさに」とかなで書くのが一番よい。
さらに問題文が、文章としてでたらめであることが実例を挙げて示されます。
タチの悪いパズルにすぎない、と。

また、2級までは略字(常用漢字表字体)が正答で、
「文藝」などと正字で書くと誤答となってしまうのは不当である。
ここでは、漢字に対する思想性が批判されています。

「両雄倶に立たず」では、
最近評価の高い白川静と藤堂明保のかつての論争が客観的に紹介されています。
なお、「両雄」という題は、編集者がつけたもので、
両氏を「雄」とは思っていないと「あとがき」に書かれています。

「寅さんあんたはトラなのか」では、
十二支に動物が当てはめられていますが、理由は不明とのこと。
寅がなぜ虎なのか分からない。
そういえばそうかと思いました。

「声で読むのと目で読むの」では、
音読についての誤解が指摘されています。

そのほか、漢字の読み、西暦・和暦と時剋、寮歌など話題は多岐にわたっていますが、
杜甫の「春望(国破れて山河あり)」のていねいな解説もあります。

ファンとして、なによりも著者の健筆を喜びたいと思いました。