コロンビアの政治と民主化の戦いの現状の貴重な報告
★★★★★
北朝鮮による拉致被害家族の発言はよく報道されるが、拉致された側の発言は政治的な理由からかあまり詳しくは報道されない。本書ではコロンビアという国においてゲリラに拉致された政治家の悲痛な叫びと拉致生活をその背景から書き起こし、「ママンへの手紙」の意味と心情を深く読者に理解できるような構成になっており、短い「ママンへの手紙」が感動的なものとなっている。戦争に明け暮れる国の貧しい富を一握りの強者が独占するという、発展途上国共通の愚かな政情を余すことなく描写している。コロンビアの政治の惨状が大国のエゴイズムとそれと結託する一部政治家の行動に基づいており、途上国の平和と平穏な生活を取り戻すことの困難さと術無きやりきれなさを伝えている。それに加えて感動的なのは、人は困難に巡り合わせた状況において何を頼りに生き続けるのかを「ママンへの手紙」が語っている点である。