脳科学で洗脳を見ると・・・・
★★★★☆
本書のテーマは、書名通り「洗脳」である。類書と異なる点は、社会心理学的なアプローチだけでなく脳科学的なアプローチで洗脳が分析されていることである。洗脳とは、脳科学的には、深く考えるときに働く前頭前野を働かせることなく、認知ウェブを操作する活動と捉えられるようだ。このように洗脳の脳科学的なアプローチは、新たな洗脳の理解を導くもので大きな貢献があるだろう。しかし、本書では、洗脳されるときに脳のどの部分がどのように反応しているのかは理解できたが、脳科学の知見から、今までと異なる発見や新たな示唆が得られたのかは、明確には読み取れなかった。(読み込み不足かもしれないが)
うまく翻訳されており、日本人に理解できない比喩は解説が加えられているが、翻訳書の難点である難解さは残る。加えてボリュームもあるため、読み切るには数日はかかる。研究書にしてはわかりやすく工夫はされているが、一般の人が読むにはやや忍耐が必要だろう。心理学の知識がある人は、脳科学的なアプローチは新鮮に感じるだろう。