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ヴァインランド

価格: ¥815
カテゴリ: 単行本
ブランド: 新潮社
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買いです。 ★★★★☆
90年発表のピンチョン4作目の長編小説です。ピンチョンは高校生の頃、「V.」を読んだのが最初で、以後翻訳された順に読んだので、この作品も98年に読みました。「コンプリート・ワークス」で刊行される前に予習のつもりで、いま一冊ずつ読み返しています。百科全書的な「重力の虹」に比べると、明らかに読みやすく、17年ぶりの新作に過剰な期待を抱いていた人にはかなりの肩すかしだったと思われますが、正直「重力の虹」はあまりの長大さが手に余り、途中から自分がなにを読んでいるのかわからなくなる瞬間さえあったので、この「ヴァインランド」のポップさは新たなピンチョン体験でした。今回は読み終わった直後に、ネットで見つけてプリントアウトしておいた、「新潮」1999年3月号の書評や、いつか読もうと買っておきながら結局今日の今日まで手に取ることのなかった木原善彦氏「トマス・ピンチョン ー無政府主義的奇跡の宇宙」を読んでみました。すると、なんとまぁ、どこをどう読んでいたのかと我が身が情けなくなるほど、教えられることが多かったのですが、ただピンチョンを読んでこれほど笑った作品もなかったので、個人的には楽しめたように思います。構造的には、ほかのピンチョンの作品にも共通して言えることだと思いますが、二項対立の図式を常に念頭に置いて読むと細部に至るまで明瞭に読みこなせるような気がします。あらすじについては要約を拒むような作品なので触れませんが、個人的に情けなかったのは、8ページのデズモンドのドッグフードとブルージェイのエピソードが、573ページの「(デズモンドが)ブルージェイの羽毛を顔面にいっぱいつけて、」につながってきたのは気づいたものの、実家の飼い犬の食べ残しをすずめが集団でつついている様子を満腹で横になった犬が追い払うでもなくぼんやり見ていたという個人的な懐かしい思い出に引っ張られて、「ブルージェイとどこかで遊んできたのかな」とか暢気に考えてしまったことです。ここの解釈や、なぜブロックがヴェイトとブラッドによって死に誘われたのかは、前述の木原善彦氏の著書に教えられました。しかし、志村正雄氏の「解註」の倣いに従ったと思しき佐藤良明氏の手になる「『ヴァインランド』を楽しむための訳者ノート」は、「いくつか〈読み〉を誘導するような註もあって、少々鬱陶しかった」とする向きもありますが、悪のりと受け取られかねないところもありつつ、なにより本作を楽しんでいる、訳者の高揚感のようなものが伝わってきて、なにかと神経をすり減らしそうなピンチョン作品の翻訳に対する労いの意を込めて、これくらいの遊びは許されて然るべきだと思いますし、正直とても楽しめました。ただまぁ、スペイン語訛りの英語の猥雑さを狙ったのはわかりますが、それでもやはり大阪弁は読みにくかったです。
いろいろな意味で興味深い ★★★☆☆
はじめにいっておきますが、ピンチョン嫌いではありません。一応、スローラーナーもV.も競売ナンバー49の叫びも読んでいるし、面白いと思ってきました。
でも、この作品には、「???」という気分なんですよ。
まず、翻訳が良くない、と言うか、悪いといいたい。
どう悪いかと言うと、中途半端にポップさを強調している文体が悪いのであって、この文体では、文学にもライトノベルにもなっていない。
よく調べてある翻訳だとは思うし、大変な努力をなさった、とも思うのですが、しかし、センスがない。
方向性を選び違えている。
特に、せりふ中に、傍線で語尾を延ばしたりするのが散見されますが、これはダサい。
ダサすぎです。
と、まぁ、それはおいておいて、この作品を読むと、面白いなと思わせられる部分があります。
それは何かと言うと、「日本でのピンチョン認識って、ちょっと間違ってるんじゃない?」ってことなんですね。
日本ではピンチョンってすごく巨大な、深い作家っていうイメージ認識がある。
でも、この作品は、舞台の一部が日本ですけど、われわれにわかりやすい題材の料理の仕方を見ると、そこにはむしろ、非常に漫画的と言うか、アニメ的と言うか、一種のチープさが強く表に出てくる。
すると、これまで競売ナンバーやV.にも、さまざまなサブカルチャーが出てきたわけですけど、それらについては、われわれ日本人は、直接的に理解することは難しかったわけですが、実は、思ったよりももっとチープなイメージをまとっていたのではないのかな、と思わせられるわけです(もちろん、そういった面とは別に、物語の構成や裏の持つ意味とかが、ピンチョンの深さだとは思うのですけれど)。
そういう意味では、この翻訳者の、いかにもチープな翻訳はまぁ、ある意味正しい。
でも、センスが悪いんですね。(苦笑)
ピンチョンが描く9・11後の世界は? ★★★★★
ピンチョンてあまり読んだことなかったけど、というよりかなり寡作な作家なので、読む機会がなかったが、なかなか面白かった。

アメリカって国は面白い。まったく左翼なんて存在しないかのようだが、実は、今でも生き延びていて、社会のバランスを巧妙に図っている。ただ、9・11以後はどうなんだろう?

9・11以後のアメリカをピンチョンはどう描くのだろう?
「理解」≦「感じる」 ★★★★★
 個人的にはピンチョンの作品はこのヴァインランドに限らず、「理解」よりもむしろ「イメージして感じる」ことが重要なのではと思っている。
 「重力の虹」「V」など、イメージのカオスに身を委ねて読み進めて行くうちにひとつの巨大なイメージが出来上がる。その「イメージ」を「感じる」ことがひとつの理解につながるのでは…?ピンチョンの快楽…。
別の意味で評価が分かれる本 ★★★★☆
ピンチョンの従来の作品から比べると格段に読みやすい、と言っていいでしょう。少なくとも話の軸をフォローしていくことはさほど困難ではありません。もちろん、圧倒的なディテールを濃厚かつ軽妙な語り口で描写するスタイルやフラッシュバックの多用などはいつも通りですが。

恐らく評価が分かれるのは、メディア化しコンピュータ化された社会のなかにあぶり出されている「悪」の存在についてでしょう。社会の混沌そのものがそのままの形で提示されようとしていた「重力の虹」などと比較すると、テーマが実体的に絞られた分、読みやすくはあるのですが、「悪」が矮小化されてしまっている点は否定できないと思います。従来のファンはちょっと肩すかしを食らわされた印象を受けるかもしれません。
カウンターカルチャーのツールとして出てくる忍者もどきや北斗の拳まがいの拳法なども、ちょっと評価に苦しむ所でしょう。恐らくこの小説が発表されたのが80年代半ばであることも関係しているのでしょうが。