そこでカルチュラルスタディーズという研究は社会の権力構造への批判的な精神を内在する。ゆえに、一度この研究が体系化され支配的になると、そこへ新たな、そして厳しい批判が向けられることになる。この意味で、何がカルチュラル・スタディーズかということで、つかみ所のない様相を見せることになる。ゆえにサラリーマン大学教授などにとってこの手の研究は行き着くところのない「不毛」の議論として、「一体なんなんだ~」と相手にしないかもしれない。
しかし、そういったことはこの読者である「普通」の人間には必要のないことであり、だからこそ自由に、そして勇敢に批判の目をもって文化や社会を読み解く試みができるのだろう。解説者による著者へのインタビューの中で、この本の対象者が「大学生や文化に興味ある普通の人」という答えがそのことを指し示していると考える次第である。
本書ではあくまでもカルチュラルスタディーズの大きな議論の潮流を示したものであり、個別の議論の理解についてはやはり具体例を交えた原書や議論に当たるしかない。ただし、この研究の起源やその流れやその問題が把握できれば、その後の難解な個別議論を理解する助けとして役に立つはずである。
教科書と一緒に使う資料集みたいなもの(多分)。
中途半端かもしれないけど、あると訳にたつ(多分)。
でも、毛利さんの解説にある文献リストはなかなか訳にたちそう。
需要は少なそうだけど、パラパラ見るのはいいかもしれない。