SNSが紡ぐサスペンス 人と人との繋がりを問う
★★★★☆
〜高校2年の麻美と友人達は重要なコミュニケーションツールろして、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を活用している。ある日麻美のSNSの個人ページに「繭」という知らない名の足跡が相次いで残されていた。訝しく思う麻美に、今度は繭からメールが届く。戸惑いながらも返信しているうちに、麻美は繭とSNSのトモダチとなった。直後繭から一枚の画像が送られてくる。そこには頭部から夥しい量の血を流して倒れる女子生徒の姿が。薄気味悪さを覚えた麻美は、繭をSNS上のトモダチから外すことにしたのだが・・・・。〜
現代の高校生にとってはもはやなくてはならなくなった存在のケータイ、SNS・・ 裏サイト。 しかしネットの世界は虚実綯い交ぜである。そこはリアルとバーチャルが境界線もなく混在している。そのネットが空恐ろしい怪物を生み出した。なかなかに今の高校生の生態を詳しく描いている作品だ。ただネット界に蠢く数多の都市伝説をうまく題材にしてはいるが恐ろしい本格的ホラーというほどではないか。ネットやパソコンについてある程度の知識がある人には張ってある伏線なども気づきやすい。事実わしでさえも途中で伏線に気がついた。
むしろネットに対する人間の心理をうまく描いている心理サスペンスと言う感じかな。モニターの向こうにいるのは間違いなく自分自身と同じ人間なのである。だからこそそこに介在する人間の悪意がより恐ろしい。しかし終わりを迎えてほっとしたのもつかの間、最後の一ページで嫌な・・・ ブチ!
・・・ 一通のメールが届いています。 ・・・・・
現代に生きる人間の胸倉を掴んで放さない奇跡の小説だ!!
★★★★★
戦後はもちろん、たとえばこの10年を見ても、
『個の尊重』という社会的風潮は強くなり続けている。
それに伴って生まれている、
ケータイ、ネット、SNS……
といった『個と個をつなぐ道具』。
けれども、どうしてだろう?
私たちは、ケータイが気になって手放せない。
メールボックスの受信ボタンを押さずにはいられない。
『個の尊重』に誰もが了解し、喝采を浴びせながら、
『個と個をつなぐ道具』に戸惑い、飽き足らずにいる矛盾を
私たちは誰もがはらんでいる。
本作品は、
サスペンスの王道を貫きつつ、
そうした高度情報化がもたらす人間の病を巧みに突く。
読後覚えるのは、
誰かを思う、気遣う、あるいは支えることとは
どうあるべきなのかという問いかけだ。
それは、『個の尊重』といった言葉も、
高度情報化といった事象も、全くなかった時代から
脈々と問われ続けていることではないか――。
奇跡の小説である。