残念ながらこの作品を受け入れるのは無理でした。沙野さんの作品には好きなものも幾つかあるし、文章力はとても高い方だと思います。この作品の中でも、久隅は何とか受け入れたのですが、（３P以外に方法は無かったのか、とは思いましたが）、神谷は無理でした。あまりにも自己中心的過ぎます。何もBLの主人公はいい人でなければいけない、なんて浅はかなことは申しません。屈折していてこそ、人物も作品も面白いと思います。でも、彼の自己中は読んでいる人間を不愉快にさせるものでした。でも、これも私の主観に過ぎません。高評価がレビューに多いことに正直驚きましたが、受け取り方はそれぞれでいいんだ、と思っています。

久隅は鬼畜で下種ですね…。私の大嫌いなタイプ。加虐趣味な男と被虐趣味な男。ちょうど良いと言えばちょうど良いのでしょうが…。何か話にちょっと無理があるのでは?余りこの話に愛情は感じられませんでした。獣のような情欲ばかりが表立ってしまって。前作の「蛇淫の血」の方が私は好きだったなァ。何かこの二人は歪み切っていて…。作中で久隅がクスリを使っていましたが、確か岐柳組ってクスリはダメって前作で書いてありませんでしたか?そういう組の掟に従わない久隅ってどうなの?まぁ、所詮ヤクザ屋さんってことなのかな。久隅、罪悪感なんてこれっぽっちも持ち合わせていない鬼畜だから。神谷にも結構失望したし。案外だらしない男だったみたいで。もう少し職業意識のしっかりした男だと思っていたのに…。ダラダラ流されちゃって。この二人の付き合いは検察内部に知れたら大問題になると思うけど。ヘタすりゃクビ、良くても左遷よ。それなのに二人共に立場なんて無視なのね。何か職業人として有り得ない。 3Pのくだりなんか、思い切り引いてしまいました。何か最悪…。これで上手くいくって話の流れについていけなかった。久隅は鬼畜で下種だけど、神谷はかなり壊れてますね。二人共歪み切っていて、私はこのカップルは苦手です。前作の二人が懐かしい…。鬼畜物って苦手と言うか、はっきり言ってキライ。奈良千春さんのイラストはやはり素敵でした。でも私蜘蛛って寒気がするほど大嫌いだから、久隅の趣味の悪さにもウンザリ。背中の蜘蛛が死んだことに返って拍手したいくらいです。蛇は嫌いじゃないので、凪斗の背中は全て見たかったけど…。 ま、作品の好みは人それぞれと言うことで…。

ヤクザと検事の非常に濃ゆ〜い愛憎劇です。

ヤクザの攻め久隈の神谷に対する執着心がとにかくすごい。
その壊れっぷりが恐ろしく、特に神谷が職場で密かに思いを寄せている男性、木内へのあの残酷な仕打ちには、少々ひいてしまいました。
とにかく登場人物がみんな陰鬱すぎる。
そんな中でも神谷の清廉さがほのかに光り、このあたりは上手な明暗の対比だなと思いますが、
物語のほの暗い世界観に引きずられて、その清廉さもいっそ痛々しく見えてしまいました。

全体的に重くて、暗くて、ドロドロしていて、思いっきり妖艶な恋愛世界に嵌まりたい気分の人向けです。
ただ、暗すぎ・重すぎなあまり、逆に安っぽく読めてしまうというところもありました。
話にリアリティを感じることが難しくなるからだと思います。
が、文章に難ありということではありません。文章も巧みでイラストも美しかったです。
そしてエロエロでした。すごく危険なエロでした。もっと甘いエロが好きな私にはハードでした。

もう少しライトなものが好みなので、趣味の問題ですけど☆は３つです。
意外に評価が高かったので、嵌まれない自分がちょっとさみしいです。

前作よりこちらの方が好きです。
タイトルの割にさらりとした印象の前作に比べ、こちらは「沙野先生、奈良先生、どーし
ちゃったの!?」という位、濃い〜エロスが炸裂してます（笑）。
攻めの強引でえげつない攻めっぷりは鬼畜と紙一重（ていうか鬼畜）。でも受けにはその暴
力的なまでの激しさがどうしても必要で…。
悪く言えば利害の一致カップル。詩的に言うならしっかり組み合わさった歯車、又は精巧な
鍵と錠前のような二人。
「利用」から「渇望」へ、「利害の一致」から「唯一無二の存在」へ。理屈ではない互いの
引きずられていく感が、香りを効果的に使いながら巧みに描写されています。
「仲よく手ぇ握り合いながらアンアン言うセックスなんて、したくねぇだろ？」
このお下品なセリフに続くラストシーンは、静寂と穏やかさに包まれ神聖さすら漂います。
至極単純な動作を、互いの想いの象徴へと昇華させる沙野先生の筆力の妙！
全編に散りばめられた歪んだ黒いエロがあるからこそ、このエピローグへの帰結が
よりいとおしく透明なものに感じられるのです。
「人間の想像力バンザイ!!」ラスト数行のみで私にそう言わしめた作品。
至極単純な動作とは何なのか、気になる方は読みましょう（笑）！

「邪淫の血」のスピンオフ作品ですが、私はこちらのほうがより好きです。
ノワールなストーリーな上に、生々しい陵辱３Ｐまであったりして、
その点は好みが別れるところかもしれませんが、
ヤクザである久隅の、神谷への凶暴な愛が切なく、
神谷の身体と引き換えに、自分の半身をも殺してしまうシーンは
どんな愛の告白より胸に迫りました。
お上品なヤクザが多いＢＬですが、暴力的で「良心の持ち合わせが少ない」久隅は、
かなりリアルなヤクザに描かれてるかも？
個人的にお気に入りは、久隅さんの秘書の堀田さんでした。（唯一まともな人だったような・・・。）
紗野さんの文体の繊細で美しい表現力に、読みながら度々ハッとさせられました。

挿絵の奈良さんの挿絵すべてが本当にジャストフィット。
ここまで生々しく描いて下品に落ちないセンスと画力に拍手です。

八十島セキュリティーのメンバーあたりで、また続きが読みたいですね。