都市計画の枠にとらわれない提言
★★★★★
私の中で、法改正と言えば単純に「だめなところを直すための技術論」だったのでこの本の内容は衝撃だった。
田中角栄は政治と金の問題の象徴としてしかしらなかったが、数十にも及ぶ議員立法をものにして、戦道路や鉄道、橋、公共施設などを法律、予算、合意づくりなど、日本の成長のための制度のインフラを作り、高度成長可能な「制度上のインフラ」を完成させた。当時は国民の多くがそれを求めていたし、時代が求めていたのだと思う。
その仕組が高度成長がとっくに終了した今も、まったく同じように機能していることが問題だ。
多くの道路ができて、鉄道網もかなり整備され・・・それでも法は変わらない。
今の日本に合わせたシステムをつくる能力を持った政治家がいないことが日本の大きな問題だとこの本は指摘する。
そして、国に大きな権限が集中する今の都市計画法を徹底的に地方分権し、地方の知恵で再生しうる制度へと変え、何十年も前の進まない計画は自動的に廃止するなど、田中角栄の都市計画からの根本的脱却を提案する。
さらに日本の個別の権利に固執する土地制度を見直しすため「総有」という新しい土地所有の概念が語られる。
この本は、都市計画法にとらわれない、日本の国土と都市、そして日本人を問い直す思想書なのかもしれない。