著者の楽しさが伝わってくる、ハイパーの名に恥じぬ情報満載のガイドブック
★★★★☆
荒俣宏氏らによる磯遊びガイドブック。いろいろな磯のタイプを紹介し、そこでできる釣り、シュノーケリングなどの磯遊びや注意事項、水中写真の撮り方をきれいな写真を交えて紹介しているほか、磯の生物図鑑や採取した生物の輸送方法や飼育法、各地の水族館や体験学習可能なNPOなどきわめて多岐にわたる情報がわかりやすく説明されている。対象は子供とは限らず、誰でも楽しく読むことができる内容。
自分が子供の頃にみた磯遊びガイドブックと比較すると情報量の多さに圧倒される内容で、きわめて実践的でもあり、著者がいかに磯遊びを楽しんでいるかが随所に見られる良書と思う。表紙の子がつかまえているのはハリセンボンだし、磯でオトヒメエビをつかまえているのも意外。陸に上がったハゼを釣る『陸上見釣り』も面白そう。写真に写っている子供から大人までみんな楽しそうで見ていて羨ましくなる。また、漁業権についての注意は当然のこと、採取した生物を飛行機で運ぶ場合の注意であったり、自家用車に簡易シャワーを装備するなどの情報まで網羅されていて、『ハイパーガイドブック』の名に恥じない分量だ。
良書であることに異論はないが、あえて難点を述べるならば、やや写真割りが小さいので、もうひとサイズ大判にしてもいいかなという点(ただし持ち運びを考えると難しいかも)。また、図鑑の部分はほとんど見かけないような生物なども紹介されている反面、よく見る生物が紹介されていないこと。たとえばウミウシはミノウミウシと種名不明の2種類のみが掲載されているだけ。さらにはそれぞれの生物の大きさなどの情報がほぼ皆無である点。たぶん写真映えする生物を中心に掲載していると推測されるが、珍しいものはむしろ専門的な図鑑に譲ってもよさそう(魚類に限ってみれば同氏の『磯魚ワンダー図鑑』はそこそこのでき)。あと、読者が全国各地にいることを考慮して、水族館などは一覧表でもいいから限定せずにすべて紹介してもいいと感じた。
難点をいくつか述べたが、買って損したという気は全くない。時代に沿ったガイド内容であり、少なくとも星4つの価値は十分。