この値段を出しても損しません!
★★★★★
団塊の世代にはただただ懐かしく、居間でねっころびなからページをめくっています。私が一時期ハマった貸本マンガもほんの一握りの代表作だけですが掲載されていてうれしかった。類書にない点は多々あるが、この手のセレクトではわれわれ団塊世代が子供時代に慣れ親しんだ作品は、(おそらく版が切れているためか)ほんとんど無視されるか、逆にレアなものに偏った再評価が多かったが、よく公平に選ばれていると思う。とくに、私の知らなかった少女マンガが充実していて、なかには文庫が出ていれば読んでみたいものも発見できた。とくに調べるというわけでなくても、別冊の経歴集は作家本人の「公式」ということなので、作家自身がどんな作品を代表作としてあげているのか興味深かった。これから、時間の余裕ができたら読みたい本を探すときに重宝しそうな、ありそうでなかったガイドブックといえるのでは。この厚みと値段は、戦後マンガの歴史の層の厚さを考えれば当然だと思う。
一家に一冊ものでは?
★★★☆☆
これまでありそうでなかった本だと思う。別冊宝島などと比べ収録作品が少ないのは確かだが、それを補って余りあるのが、一作品ごとにマンガの図版を必ず載せていること。とくに未知の作品は、絵と紹介文があってはじめてどんな作品かイメージでき、この本ではじめて知った作品(とくに、60年代以前の古典も過不足なく収録されている)で読みたい作品がいくつもあった。とくに研究者でなくても、雑誌発表の順をおって作品紹介が載っているので、水野英子の「銀の花びら」と松本零士の「銀の谷のマリア」もほぼ同時期でふたりは当時交流があったんだな、とか、歴史を刻んだ作品相互の影響がうかがえたり、いろいろな読み方ができると思う。四色の口絵も、「別冊平凡」が扱わなかった80年以降と「青年マンガ」まで入っていて、「別冊平凡」と同じように米沢さんが監修されていて、単純に見て楽しい。主要な雑誌の創刊号がずらっと並んでいるのもうれしい。個人的には、別冊の資料編の「現代漫画史年表」と「漫画作家事典」が使い出がありそう。いくつか広い読みしただけでも、これまでネットなどで誤って広がっていたと思われる有名作家のデビュー作やその掲載誌などがいくつか訂正されているようだ(作家本人の公認データということらしい)。とくに、故人のデータはネット、いくつかの人名事典にも記載そのものがないものも多く、重宝です。最後に、地味だが、元手がかかっていると思ったのは、連載期間のデータかもしれない。この前、小学館の小冊子(!)に出ていた「いなかっぺ大将」の連載データが一部まちがっていたことを確認(笑)。結論として、ブロガーなど、ちょっとマンガについて書くとき、資料として脇にあれば、とても便利な本だと思います。収録作品をせめて倍にした改訂版を早く出してくれ〜!
辞典?博物館?
★★☆☆☆
帯に「辞典」と書いてあったが、これは誤解を招く。本書は漫画を網羅はしていない。諸般の事情で掲載できないものもあるんだろうが、それだけじゃないだろう。、たとえば、「エロ漫画」については系統的に排除されている。ロマンポルノをまったく入れずして戦後映画史の辞典はつくれない。
じゃあ「博物館」なのかというと、そうした編者の問題視角からの「博物館的」配列もなされているようにはおもえない。どうも選択の基準に重視されているのは、何らかの「賞」をとったこと、みたいだ。これはつまらない。
子供時代「漫画大百科」とかが確かケイブン社とかからでてよく買っていたが、それとたいして変わらない。あっちが500円で、こっちが4500円という違い以上に、なにかあるだろうか?。